日記 + 最新小説保管 / 創作・版権二次創作 / 同性愛要素、性表現含
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ラウレル×AX(notエレメス) (♂×♂)
リヒタルゼン、レッケンベル社。
その地下には、今はもう見捨てられた研究所がある。
異形の者達が徘徊する忌わしき場所と成り果てたそこには、日夜冒険者が腕を磨きに訪れる。
そこに溢れる絶望と悲しみを知ってなお、冒険者達の歩みは止まらない。
リムーバ三体、ウィレスが三体に、生体研究所の住人であるアルマイア=デュンゼ。それらが一斉にアサシンクロスにまとわり着いていた。
プリーストのキリエが飛び、アサシンクロスの躯を光の盾が包み込む。が、プリーストの後方から更にリムーバの影が数体見えた。
キリエを貰っても、この手数を凌いで向こうにいるリムーバのタゲを取りに行くのは厳しかった。
プリーストはヒール砲で応戦しているが、体力のない彼は受ける攻撃が大きく、自らにヒールをするのが精一杯。サンクチュアリを展開しようにもその隙に攻撃を受けては倒れてしまう。
状況を打破しようと何とかベノムナイフを投げたのだが、尚そのままプリーストに群がる敵を認めたアサシンクロスは叫んだ。
「そのまま飛んでください!」
「解りました、そちらも無茶しないで」
無理、ではなく無茶と言われたことにアサシンクロスは苦笑を浮かべた。
テレポの詠唱とともにプリーストの気配が消える。それきり途切れたパーティ間の声に一瞬不安が過ぎるが、冒険者証に表示されるマップに点々と飛び回る相手の位置を確認し、それを杞憂と知る。どうやら上手いことテレポで逃げ回っているようだ。
たまたまギルドで時間のある二人で来てみた生体研究所。レベル的には少々敷居が高かったかもしれないが、気心の知れた未転生プリーストとAXのペアなら行けるだろうと来てみたのだ。
単にプリーストのポータルメモにリヒタルゼンがあったから、という至極単純な理由もなくはないのだが。
安定した狩だったのだが、此処にきて一気に敵が押し寄せた。危険なときも飛びたがらないプリーストだったが、今日は事前にしっかりと約束をしていた為素直に飛んでくれた。
プリーストの無事を確認したアサシンクロスは、先ずはとばかりに自分のフリーを奪うウィレスを片付ける。そのままメテオアサルトを連打してなんとか辺りを一掃した。
先程プリーストに纏わり着いていたリムーバ達も倒し、アサシンクロスは漸く人心地つく。
「ふう……」
彼に飛んでもらわなくとも良かったかもしれないが、プリーストの安全を最優先に考える彼としてはこれが最良の選択だった。
周囲の物陰を確認してから壁に寄りかかり、アサシンクロスはプリーストに声をかける。
『大丈夫ですか?』
『はい、こちらは。マップ内はところどころ敵が固まってましたので移動は気をつけています。あと他にも狩っている方がいるようで、いわゆる「食いかけ」があちこちに居ます』
プリーストが深刻な口調でいう「食いかけ」は、スキルアクティブ状態の敵。ひとたびこちらが攻撃を仕掛けると、彼らはスキル攻撃をしてくるように作られたらしいのだ。
『解りました。気をつけて戻ってきてください』
『……貴方も気をつけてくださいね? 本当に、無茶しないように。ではそちらに向かいます』
無茶しないようにと念押しされたアサシンクロスは、再び笑みを漏らす。危なくなったらすぐ飛んで貰うように約束した代わりに、自分も無茶をしないと約束してあったからなのだが。
「……そんなに信用ない、かな」
そう呟いた瞬間、気配に気付いたアサシンクロスが振り返ると、緋い光が強襲する。
「ッ!」
そこにいたのは生体研究所の住人、ラウレル=ヴィンダーだった。
こちらから攻撃を仕掛けていないにもかかわらず魔法を撃ってくる。プリーストの言っていた「食いかけ」なのは明らかだった。
相手は念属性なので、アサシンクロスはカタールに毒を付与して攻撃を仕掛ける。相手は体力のないマジシャン、ごり押しでいけばなんとかなるかもしれない。
が、相手の放つ強力な無詠唱のソウルストライクを喰らってしまったアサシンクロスは、その場にがくりと膝を着く。そのまま床に倒れこみ、仰向けになったアサシンクロスの躯の上に、ラウレルが騎乗するように乗りあげた。
止めを刺されるのかと思ったアサシンクロスだったが、相手の様子がどうもおかしいことに気付く。魔法の詠唱もせず、かといって杖で攻撃をしてくる風でもない。ただじっとこちらを見下ろしているのだ。
「……?」
不思議に思って相手の顔を覗き込んだアサシンクロスは言葉を失った。
あろうことか、ラウレルの頬から雫が落ちていた──彼は、泣いていたのだ。
「……え?」
一体どうすればいいのか──と言っても全身に受けた魔法の衝撃で腕さえあがらないのだが──解らないアサシンクロスはただ、ラウレルを見つめていた。
こうして落ち着いて眺めると、ラウレルはまだ十代の少年で、マジシャンという職も手伝ってその腕は力を込めれば折れてしまいそうなほど華奢だった。
アサシンクロスの上に座り込んだまま、ラウレルはただひたすら頬を涙で濡らす。
何故、悲しそうに自分を見るのか。何故、止めを刺さないのか。
ラウレルの手がアサシンクロスの頬に触れる。思いがけず優しい手つきで頬を撫でられ、アサシンクロスの胸に驚愕が走った。
(この子は、生きている)
もしもこの腕が上がるならば、涙を拭ってやれるのに。
「エ……めス……サ……」
ラウレルの唇が僅かに音を奏でたその時、ラウレルに向かって魔法が投げられた。
「レックスディビーナ! サンクチュアリ!」
朗々とした福音がその場に響き、次いでアサシンクロスにリザレクションがかかる。
躯が軽くなったと同時に、ラウレルから殺意を込めた負の感情を感じ取ったアサシンクロスは、戸惑いながらもラウレルを跳ね除けて起き上がった。
もう数秒反応が遅ければ、彼の杖をまともに受けていただろう。
ふと詠唱が聞こえたほうを見やると、駆け寄って来たのはパーティメンバーのプリーストだった。
「すみません、遅くなりました! ……どうしました?」
「あ、いいえ……」
プリーストの祝福を受けながらアサシンクロスは言葉を濁した。
目の前のラウレルに視線を投げると、無機質で感情を語らない目で自分に攻撃を続けている。
先程見せた表情も涙も、何もかもがまるで夢だったかのように。アサシンクロスを敵と認め、沈黙したままただひたすらに杖を振り続けていた。
「倒さないんですか?」
怪訝そうに尋ねるプリーストに、数秒の間をおいてからアサシンクロスは答えた。
「……いえ、倒し……ます」
毒を付与し、アサシンクロスは沈黙を受けたままのラウレルにカタールを向けた。
ラウレル=ヴィンダー──の姿をした者──は、アサシンクロスの攻撃を受け、あっさりと倒れる。
「さ、行きましょうか」
ラウレルの倒れた場所に残された、一つの腕輪。それを拾い上げたアサシンクロスは、プリーストに先行きを促しながら、収集品を入れる袋とは別の懐に腕輪を忍ばせた。
「はい。次からはもう少し気をつけて飛びますね」
「気をつけるのは俺のほうですから。それに飛んでくれてよかったですよ」
「じゃ、二人で気をつけましょう」
微笑むプリーストに笑顔を返したアサシンクロスは心の中で呟く。
(君の心は、俺が持っていくから)
アサシンクロスの耳に、その返事が研究所のどこかから聞こえた気がした。
その地下には、今はもう見捨てられた研究所がある。
異形の者達が徘徊する忌わしき場所と成り果てたそこには、日夜冒険者が腕を磨きに訪れる。
そこに溢れる絶望と悲しみを知ってなお、冒険者達の歩みは止まらない。
リムーバ三体、ウィレスが三体に、生体研究所の住人であるアルマイア=デュンゼ。それらが一斉にアサシンクロスにまとわり着いていた。
プリーストのキリエが飛び、アサシンクロスの躯を光の盾が包み込む。が、プリーストの後方から更にリムーバの影が数体見えた。
キリエを貰っても、この手数を凌いで向こうにいるリムーバのタゲを取りに行くのは厳しかった。
プリーストはヒール砲で応戦しているが、体力のない彼は受ける攻撃が大きく、自らにヒールをするのが精一杯。サンクチュアリを展開しようにもその隙に攻撃を受けては倒れてしまう。
状況を打破しようと何とかベノムナイフを投げたのだが、尚そのままプリーストに群がる敵を認めたアサシンクロスは叫んだ。
「そのまま飛んでください!」
「解りました、そちらも無茶しないで」
無理、ではなく無茶と言われたことにアサシンクロスは苦笑を浮かべた。
テレポの詠唱とともにプリーストの気配が消える。それきり途切れたパーティ間の声に一瞬不安が過ぎるが、冒険者証に表示されるマップに点々と飛び回る相手の位置を確認し、それを杞憂と知る。どうやら上手いことテレポで逃げ回っているようだ。
たまたまギルドで時間のある二人で来てみた生体研究所。レベル的には少々敷居が高かったかもしれないが、気心の知れた未転生プリーストとAXのペアなら行けるだろうと来てみたのだ。
単にプリーストのポータルメモにリヒタルゼンがあったから、という至極単純な理由もなくはないのだが。
安定した狩だったのだが、此処にきて一気に敵が押し寄せた。危険なときも飛びたがらないプリーストだったが、今日は事前にしっかりと約束をしていた為素直に飛んでくれた。
プリーストの無事を確認したアサシンクロスは、先ずはとばかりに自分のフリーを奪うウィレスを片付ける。そのままメテオアサルトを連打してなんとか辺りを一掃した。
先程プリーストに纏わり着いていたリムーバ達も倒し、アサシンクロスは漸く人心地つく。
「ふう……」
彼に飛んでもらわなくとも良かったかもしれないが、プリーストの安全を最優先に考える彼としてはこれが最良の選択だった。
周囲の物陰を確認してから壁に寄りかかり、アサシンクロスはプリーストに声をかける。
『大丈夫ですか?』
『はい、こちらは。マップ内はところどころ敵が固まってましたので移動は気をつけています。あと他にも狩っている方がいるようで、いわゆる「食いかけ」があちこちに居ます』
プリーストが深刻な口調でいう「食いかけ」は、スキルアクティブ状態の敵。ひとたびこちらが攻撃を仕掛けると、彼らはスキル攻撃をしてくるように作られたらしいのだ。
『解りました。気をつけて戻ってきてください』
『……貴方も気をつけてくださいね? 本当に、無茶しないように。ではそちらに向かいます』
無茶しないようにと念押しされたアサシンクロスは、再び笑みを漏らす。危なくなったらすぐ飛んで貰うように約束した代わりに、自分も無茶をしないと約束してあったからなのだが。
「……そんなに信用ない、かな」
そう呟いた瞬間、気配に気付いたアサシンクロスが振り返ると、緋い光が強襲する。
「ッ!」
そこにいたのは生体研究所の住人、ラウレル=ヴィンダーだった。
こちらから攻撃を仕掛けていないにもかかわらず魔法を撃ってくる。プリーストの言っていた「食いかけ」なのは明らかだった。
相手は念属性なので、アサシンクロスはカタールに毒を付与して攻撃を仕掛ける。相手は体力のないマジシャン、ごり押しでいけばなんとかなるかもしれない。
が、相手の放つ強力な無詠唱のソウルストライクを喰らってしまったアサシンクロスは、その場にがくりと膝を着く。そのまま床に倒れこみ、仰向けになったアサシンクロスの躯の上に、ラウレルが騎乗するように乗りあげた。
止めを刺されるのかと思ったアサシンクロスだったが、相手の様子がどうもおかしいことに気付く。魔法の詠唱もせず、かといって杖で攻撃をしてくる風でもない。ただじっとこちらを見下ろしているのだ。
「……?」
不思議に思って相手の顔を覗き込んだアサシンクロスは言葉を失った。
あろうことか、ラウレルの頬から雫が落ちていた──彼は、泣いていたのだ。
「……え?」
一体どうすればいいのか──と言っても全身に受けた魔法の衝撃で腕さえあがらないのだが──解らないアサシンクロスはただ、ラウレルを見つめていた。
こうして落ち着いて眺めると、ラウレルはまだ十代の少年で、マジシャンという職も手伝ってその腕は力を込めれば折れてしまいそうなほど華奢だった。
アサシンクロスの上に座り込んだまま、ラウレルはただひたすら頬を涙で濡らす。
何故、悲しそうに自分を見るのか。何故、止めを刺さないのか。
ラウレルの手がアサシンクロスの頬に触れる。思いがけず優しい手つきで頬を撫でられ、アサシンクロスの胸に驚愕が走った。
(この子は、生きている)
もしもこの腕が上がるならば、涙を拭ってやれるのに。
「エ……めス……サ……」
ラウレルの唇が僅かに音を奏でたその時、ラウレルに向かって魔法が投げられた。
「レックスディビーナ! サンクチュアリ!」
朗々とした福音がその場に響き、次いでアサシンクロスにリザレクションがかかる。
躯が軽くなったと同時に、ラウレルから殺意を込めた負の感情を感じ取ったアサシンクロスは、戸惑いながらもラウレルを跳ね除けて起き上がった。
もう数秒反応が遅ければ、彼の杖をまともに受けていただろう。
ふと詠唱が聞こえたほうを見やると、駆け寄って来たのはパーティメンバーのプリーストだった。
「すみません、遅くなりました! ……どうしました?」
「あ、いいえ……」
プリーストの祝福を受けながらアサシンクロスは言葉を濁した。
目の前のラウレルに視線を投げると、無機質で感情を語らない目で自分に攻撃を続けている。
先程見せた表情も涙も、何もかもがまるで夢だったかのように。アサシンクロスを敵と認め、沈黙したままただひたすらに杖を振り続けていた。
「倒さないんですか?」
怪訝そうに尋ねるプリーストに、数秒の間をおいてからアサシンクロスは答えた。
「……いえ、倒し……ます」
毒を付与し、アサシンクロスは沈黙を受けたままのラウレルにカタールを向けた。
ラウレル=ヴィンダー──の姿をした者──は、アサシンクロスの攻撃を受け、あっさりと倒れる。
「さ、行きましょうか」
ラウレルの倒れた場所に残された、一つの腕輪。それを拾い上げたアサシンクロスは、プリーストに先行きを促しながら、収集品を入れる袋とは別の懐に腕輪を忍ばせた。
「はい。次からはもう少し気をつけて飛びますね」
「気をつけるのは俺のほうですから。それに飛んでくれてよかったですよ」
「じゃ、二人で気をつけましょう」
微笑むプリーストに笑顔を返したアサシンクロスは心の中で呟く。
(君の心は、俺が持っていくから)
アサシンクロスの耳に、その返事が研究所のどこかから聞こえた気がした。
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ドル×レイス(イビルドルイド×レイス) (♂×♂) (MOB擬人化)
俺様の棲家は修道院の奥深く。修道院ったって、最近頭角を現した蝿王ンとこじゃねえ、こっちも由緒正しき王、ダークロード様の元で暮らしてる。
気のいい仲間と冒険者を楽しくいたぶる日々。たまに返り討ちされるときもあるが、そんときゃ憂さを倍返しで他の冒険者にあてる。
そんな俺様の日常が、とあるやつの訪問でぶっ壊れた。
「やあ」
薄笑いを浮かべた、気に入らない奴がそこに居た。
第一に同属だからって俺様と似たような姿格好をしているのが気に食わねえ。大体なんだその牙。スマートじゃねぇんだよ、いかにも「俺様は強いんです」ってな看板ぶら下げやがって。
同じように宙に浮く同属のそいつに向かって、俺様は睨みを利かせた。
「こんなところに何しにきやがった」
「何しにとは御挨拶だね。俺が修道院に来ちゃいけないわけ?」
俺様の発した鋭い眼光も何のその柳に風で受け流し、同属であるデッドリーレイスの奴は嫌みったらしい笑顔を浮かべやがった。
あーヤダヤダ。こういうところが昔っから嫌いなんだよ。
「俺達にゃテリトリーってもんがあるだろうが。テメェはとっととゲフェンDの奥深くかADにでも帰りやがれ」
此処にお前の居場所なんざねえんだと言い切ってやったんだが。
何故か妙な余裕をちらつかせた奴が薄く笑って口を開く。
「ドリーって呼んでくれないかな、レイ」
「ハッ、なんでわざわざお前のことを名前で呼ばなきゃならねえ。大体お前が俺様をその名で呼ぶな。許可した覚えはねぇ」
「名前があるならそれで呼ぶのは最低限の礼儀だろう? これだからレベルの低い奴は困るよ。俺よりいくつ低いんだっけ。確か20くらい違うよねえ。年上には敬意を払えってルイは言ってないの? まさかダークロード様にまでそんな調子じゃないだろうねえ」
「レベルもルイも関係ねぇだろが!」
「おまけに短気だし。ルイも良くこんなのと付き合ってられるよ」
わざとらしい溜息を吐く奴を忌々しく睨み付けながら、俺様はそこではた、と気付く。
なんでこいつ──仕方ねえからドリーと呼んでやろう──は、ルイの名を知ってやがる。
「ルイ、だと?」
「そう。俺はルイに会いに来たんだよ」
「何でテメェがその、ルイの名を知ってる」
「あれ、自分の専売特許だとでも思ってた? ルイから教えてもらったに決まってるじゃないか」
「……なんだと?」
「それにこの「ドリー」って俺の名もね、ルイが直々につけてくれたんだ。呼ばせてあげるんだからありがたく思いなよね」
どこか誇らしげに語るドリーの言葉を聞いて、俺様の長い導火線がブチっと切れる音がした。頭に血が上っているのが自分でも解る。ムカついた。心底ムカついていた。まるで俺様だけが特別のようなことを言っておいて、あのルイの野郎はこいつにも名を与え自分の名を呼ばせていたってことか。
感情が示す勢いのままドリーの胸ぐらを引っつかむも、奴は俺様の変容を楽しげに見つめ返しやがる。
「いつ」
「何」
「いつ、レイの奴がお前に名前をつけたんだって聞いてるんだよ」
「聞きたい?」
ふふんと挑発するような物言いにムカついた俺様は、恫喝するように吼えた。
「てめえなんざ腰抜けヘリオン野郎の腰巾着でもやってりゃいいんだよ」
「フン、言葉でしか相手を脅せない格下が。こんなのと見かけは瓜二つだなんてこちらのほうがいい迷惑だよ」
口喧嘩の罵り合いがあわや殴り合いへと発展するというまさにそのタイミングでやってきたのは当事者であるルイの奴だった。
ルイの気配に気付いた俺様とドリーが我先にとルイに走り寄る。
「お前はどうなんだルイ、こんな奴がいいってのか? ああ?」
「ルイ、こんな奴いい加減見限ってこっちに来ればいい。歓迎するよ」
「……煩い」
ルイの放った一言に、俺らは水を打ったように静まり返った。
一瞬の放心、続いてふつふつと湧き上がってきたのは、怒り。
こいつ……言うに事欠いて、「煩い」だあ? 誰が原因でこんなくだらねえ話になってると思ってやがるんだ。
どうやら敵も同じことを思っているようで、隣のドリーを見やるとこめかみがヒクヒク痙攣している。
こちらの思惑なぞ知ったこっちゃねえ風のルイは、いつものようにけだるげな様子でそこにあった長椅子に横たわり、相も変わらずノーブルな雰囲気満載で続ける。
「二人して私の寵を争うのも結構だが、子犬の喧嘩が部屋まで響いて寝られない。おとなしくしているがいい。どちらにしろ私は今その気ではない、目が覚めたなら相手をしよう。それからドリー」
「な、何」
ちらりとドリーを見るルイの視線を遮って、俺様はルイの奴に食って掛かる。
「おいっ、こんな奴の前に、俺様に言葉はねぇのかルイっ!」
「煩いな。ルイは俺に話しかけてるんだから邪魔しないでよ」
心底うざったそうに胡乱な視線をこちらに寄越しながら、ルイの奴は一言ばっさり言いやがった。
「帰れ」
ルイの言葉を受けて、恥辱かショックかは知らねえが、目の前でぷるぷる震えるドリーを見ていると、爪の先程度でも同情心が沸かなくもない。
軽く首を振ってから、ドリーの奴はルイに正面から向き直る。
「……そう、そういうこと。でも負けないからね。レイなんかより俺のが良いっていつか証明してやるから。それじゃねレイ、せいぜい今の内に楽しんでるといいよ!」
それだけ言い残すと、ドリーは修道院を後にした。
シン、と静かな風景が戻ってくる。
「……嵐だな、ったく」
俺様なんぞに同情されるのは死んでもイヤだろうからしてやる気はさらさらねぇが、これぞ同病相哀れむ。ドリーの奴の捨て台詞に、ムカつく前に溜息を吐いちまうんだから俺様もヤキが回ったもんだぜ。
今は一人で頭を冷やすかと部屋を出て行こうとしたのだが──
「レイ」
「……あんだよ」
「来い」
なんと、このタイミングでルイの奴は俺様に声をかけ、あまつさえこちらに向けて手を伸ばす。しかもお決まりの命令口調で。
ただでさえ神経がささくれ立ってる時に何を考えてやがるんだこいつは。
舌打ちをした俺様は忌々しげに吐き捨てた。
「誰が行くかボケ。状況ってもんを把握してんのかお前は」
「私が来いと言っている、レイ」
この、言葉の求心力。
ふざけるなテメェは、と喉元まで出掛かった言葉を何故か飲み込み、近づいた俺様の腕を奴が強引に引いた。
弾みで奴に倒れこみ、すっぽりと腕に納まった俺様を、ルイはしっかと抱いて離さない。
「おまっ、何考えてやがる」
「耳元で騒ぐな。このまま寝る」
「……」
俺様の抗議も何処吹く風で、ルイの奴はすうすうと寝息を立て始めた。
人の気も知らねぇで、まったくムカつく奴だ。それでもこいつの言うなりになっちまうのが余計に。
何処までもマイウェイなルイに完敗した俺様は、とりあえず肩の力を抜いて寝ることにした。
今日だけだ。おとなしくしてやるのは、今日だけだからな。
気のいい仲間と冒険者を楽しくいたぶる日々。たまに返り討ちされるときもあるが、そんときゃ憂さを倍返しで他の冒険者にあてる。
そんな俺様の日常が、とあるやつの訪問でぶっ壊れた。
「やあ」
薄笑いを浮かべた、気に入らない奴がそこに居た。
第一に同属だからって俺様と似たような姿格好をしているのが気に食わねえ。大体なんだその牙。スマートじゃねぇんだよ、いかにも「俺様は強いんです」ってな看板ぶら下げやがって。
同じように宙に浮く同属のそいつに向かって、俺様は睨みを利かせた。
「こんなところに何しにきやがった」
「何しにとは御挨拶だね。俺が修道院に来ちゃいけないわけ?」
俺様の発した鋭い眼光も何のその柳に風で受け流し、同属であるデッドリーレイスの奴は嫌みったらしい笑顔を浮かべやがった。
あーヤダヤダ。こういうところが昔っから嫌いなんだよ。
「俺達にゃテリトリーってもんがあるだろうが。テメェはとっととゲフェンDの奥深くかADにでも帰りやがれ」
此処にお前の居場所なんざねえんだと言い切ってやったんだが。
何故か妙な余裕をちらつかせた奴が薄く笑って口を開く。
「ドリーって呼んでくれないかな、レイ」
「ハッ、なんでわざわざお前のことを名前で呼ばなきゃならねえ。大体お前が俺様をその名で呼ぶな。許可した覚えはねぇ」
「名前があるならそれで呼ぶのは最低限の礼儀だろう? これだからレベルの低い奴は困るよ。俺よりいくつ低いんだっけ。確か20くらい違うよねえ。年上には敬意を払えってルイは言ってないの? まさかダークロード様にまでそんな調子じゃないだろうねえ」
「レベルもルイも関係ねぇだろが!」
「おまけに短気だし。ルイも良くこんなのと付き合ってられるよ」
わざとらしい溜息を吐く奴を忌々しく睨み付けながら、俺様はそこではた、と気付く。
なんでこいつ──仕方ねえからドリーと呼んでやろう──は、ルイの名を知ってやがる。
「ルイ、だと?」
「そう。俺はルイに会いに来たんだよ」
「何でテメェがその、ルイの名を知ってる」
「あれ、自分の専売特許だとでも思ってた? ルイから教えてもらったに決まってるじゃないか」
「……なんだと?」
「それにこの「ドリー」って俺の名もね、ルイが直々につけてくれたんだ。呼ばせてあげるんだからありがたく思いなよね」
どこか誇らしげに語るドリーの言葉を聞いて、俺様の長い導火線がブチっと切れる音がした。頭に血が上っているのが自分でも解る。ムカついた。心底ムカついていた。まるで俺様だけが特別のようなことを言っておいて、あのルイの野郎はこいつにも名を与え自分の名を呼ばせていたってことか。
感情が示す勢いのままドリーの胸ぐらを引っつかむも、奴は俺様の変容を楽しげに見つめ返しやがる。
「いつ」
「何」
「いつ、レイの奴がお前に名前をつけたんだって聞いてるんだよ」
「聞きたい?」
ふふんと挑発するような物言いにムカついた俺様は、恫喝するように吼えた。
「てめえなんざ腰抜けヘリオン野郎の腰巾着でもやってりゃいいんだよ」
「フン、言葉でしか相手を脅せない格下が。こんなのと見かけは瓜二つだなんてこちらのほうがいい迷惑だよ」
口喧嘩の罵り合いがあわや殴り合いへと発展するというまさにそのタイミングでやってきたのは当事者であるルイの奴だった。
ルイの気配に気付いた俺様とドリーが我先にとルイに走り寄る。
「お前はどうなんだルイ、こんな奴がいいってのか? ああ?」
「ルイ、こんな奴いい加減見限ってこっちに来ればいい。歓迎するよ」
「……煩い」
ルイの放った一言に、俺らは水を打ったように静まり返った。
一瞬の放心、続いてふつふつと湧き上がってきたのは、怒り。
こいつ……言うに事欠いて、「煩い」だあ? 誰が原因でこんなくだらねえ話になってると思ってやがるんだ。
どうやら敵も同じことを思っているようで、隣のドリーを見やるとこめかみがヒクヒク痙攣している。
こちらの思惑なぞ知ったこっちゃねえ風のルイは、いつものようにけだるげな様子でそこにあった長椅子に横たわり、相も変わらずノーブルな雰囲気満載で続ける。
「二人して私の寵を争うのも結構だが、子犬の喧嘩が部屋まで響いて寝られない。おとなしくしているがいい。どちらにしろ私は今その気ではない、目が覚めたなら相手をしよう。それからドリー」
「な、何」
ちらりとドリーを見るルイの視線を遮って、俺様はルイの奴に食って掛かる。
「おいっ、こんな奴の前に、俺様に言葉はねぇのかルイっ!」
「煩いな。ルイは俺に話しかけてるんだから邪魔しないでよ」
心底うざったそうに胡乱な視線をこちらに寄越しながら、ルイの奴は一言ばっさり言いやがった。
「帰れ」
ルイの言葉を受けて、恥辱かショックかは知らねえが、目の前でぷるぷる震えるドリーを見ていると、爪の先程度でも同情心が沸かなくもない。
軽く首を振ってから、ドリーの奴はルイに正面から向き直る。
「……そう、そういうこと。でも負けないからね。レイなんかより俺のが良いっていつか証明してやるから。それじゃねレイ、せいぜい今の内に楽しんでるといいよ!」
それだけ言い残すと、ドリーは修道院を後にした。
シン、と静かな風景が戻ってくる。
「……嵐だな、ったく」
俺様なんぞに同情されるのは死んでもイヤだろうからしてやる気はさらさらねぇが、これぞ同病相哀れむ。ドリーの奴の捨て台詞に、ムカつく前に溜息を吐いちまうんだから俺様もヤキが回ったもんだぜ。
今は一人で頭を冷やすかと部屋を出て行こうとしたのだが──
「レイ」
「……あんだよ」
「来い」
なんと、このタイミングでルイの奴は俺様に声をかけ、あまつさえこちらに向けて手を伸ばす。しかもお決まりの命令口調で。
ただでさえ神経がささくれ立ってる時に何を考えてやがるんだこいつは。
舌打ちをした俺様は忌々しげに吐き捨てた。
「誰が行くかボケ。状況ってもんを把握してんのかお前は」
「私が来いと言っている、レイ」
この、言葉の求心力。
ふざけるなテメェは、と喉元まで出掛かった言葉を何故か飲み込み、近づいた俺様の腕を奴が強引に引いた。
弾みで奴に倒れこみ、すっぽりと腕に納まった俺様を、ルイはしっかと抱いて離さない。
「おまっ、何考えてやがる」
「耳元で騒ぐな。このまま寝る」
「……」
俺様の抗議も何処吹く風で、ルイの奴はすうすうと寝息を立て始めた。
人の気も知らねぇで、まったくムカつく奴だ。それでもこいつの言うなりになっちまうのが余計に。
何処までもマイウェイなルイに完敗した俺様は、とりあえず肩の力を抜いて寝ることにした。
今日だけだ。おとなしくしてやるのは、今日だけだからな。
英×日←米(♂×♂)
※以下には国名表記がありますが、著作者様及び実在する国・人物・団体・史実とは
一切関係ございません。また、戦争行為の肯定・美化はしておりません。
自己責任で閲覧くださいますようお願い申し上げます。
一切関係ございません。また、戦争行為の肯定・美化はしておりません。
自己責任で閲覧くださいますようお願い申し上げます。
チェイサー×ケミ+ハイプリ (ヴァン×寝衣) (♂×♂)
ただの気紛れ。と言っちゃあそれまでの話だ。
俺が考え無しで動いたとき、そいつの意味は大抵後からついてくる。なら今回もきっとそうなんだろう。
なあ、そうだろ? 黒猫ヒュッケ耳のカワイイ生意気なアルケミスト。
手に入れた切欠はほんの些細なことだった。
「なあヴァン、贈り物って何が喜ばれる?」
こう見えても俺はGvギルドに所属している。脱衣なんてのを趣味で習得してたらスカウトされた。縛られるのは嫌いなんで、傭兵ってことで籍を置いている。
となるとそこそこ人脈も出切る訳で、今日も知り合いのハイプリと狩に行った帰りなんだが。そいつが清算時にいきなりそんなことを言い出しだ訳だ。
頬なんて染めちゃってまあ純なことで。からかいたくなるじゃないか。
「は。お前俺に惚れてたわけ?」
「ばっ、馬鹿っ! 俺はいたってノーマルだ! 誰がお前なんか!」
慌てて首をぶんぶん振り、バドンの如く真っ赤になった奴は頑として否定してくれる。いや肯定されても困るけどな。
「はいはいはい、んで相手は女な訳ね」
「……なんで解るんだ」
「お前がノーマルだって叫んだからだろ。さしずめ贈り主は──」
Gvギルドのこいつと仲の良い女スナの名を挙げかけると、図星だったらしいハイプリは手をばたばたさせる。
話を聞くと、今週の土曜は彼女が冒険者になった記念日らしい。先日スナに転職したばかりの祝いもあげたばかりではあるが、またプレゼントをしたいと。ご執心だねえ。
「そうだな。お前予算は」
「予算なら、装備を切り崩して幾らでも。どんなものでも用意する、彼女に喜んで貰いたいから」
「……あのなあ」
俺は思いつめたハイプリの肩を叩く。
「高価なものがすべてじゃないだろうが。『彼女に似合うもの』メインで考えてみたらどうだ? 自分が出した物で作ってもらったらそりゃー彼女の感慨もひとしおだぜ? あー、そうだな、今日の収集品で作れそうなものねぇかな」
今日俺らが行っていたのはオーディン神殿の入り口マップ。
その清算中だったのだが、清算アイテムの中に転がっていたものを俺は摘み上げる。何の因果か、何故だか知らないが二つもドロップしたそれ。
「花びら……? でも彼女はもう持ってて」
残念そうに首を振るハイプリの背中を、俺は勢い良く叩いた。
「馬鹿。こいつを細工してかんざしでも作ってやれよ。手作りの、自力で拾ったもので作ったプレゼント。こりゃ、女受けするぜ?」
とまあ、こんな感じで花かんざしが二つ作られた。何で二つなのかって、万が一職人が失敗したときにとわざわざ奴は二個分の材料を用意したのさ。
おまけに、俺に作成を立ち会わせた。俺がこの存在を知ることで逃げ道をなくし、臆することなく彼女に渡せるように。俺にはつき合わせたその謝礼としてこの花かんざしを貰ったわけだが……こんなもの俺にどうしろと。彼女と揃いでつけた日にゃ、いらん誤解を生みそうだ。
そんなわけで行き場を無くした花かんざしをなんとなく懐に入れたまま、俺はいつもの補充に出かけた。
行き先はプロの精錬所前。あの蜂蜜は今日もいるんだろうか。
「よっ」
案の定、そこにはけだるそうなアルケミストの姿があった。チビ羊も健在でアルケミストの足元の転がってるジャルゴンをがつがつ食っている。
それにしても、と俺は思う。俺の顔を見た途端の、いつにもまして不機嫌なオーラが漂い始めたのは、決して気のせいではない筈だ。
「……アンタか。何」
「俺は仮にも客だぜ? 笑顔笑顔。美人が台無しだぜ、お嬢さん」
「ちゃんと買ってくれるなら客扱いしてもいいけどね。この間、さんざ迷って買っていかなかったじゃないか」
「あー、んなこともあったな」
Gv直前にスリム白ポを買おうとしたんだが、耳打ちで在庫があるから買うなって指示を貰ってドタキャンしたんだった。
「でもそんなの良くあることだろ、迷った挙句かっていかないなんて」
「そうかもしれないけどね、ムカつくものはムカつくんだよ」
ぷいっと横を向いてふくれっつらを見せるケミ。
なんともまあ可愛らしいその生意気な美人顔を崩したくなった俺は、ちょいと相手を突付いてみる。
「なあアルケミストさん。それって、俺が他のケミが作ったポーション使ったかもしれないから妬いてたりして」
「はあ!?」
思った以上にいい反応に嬉しくなる。まったくカワイイねえ、顔真っ赤にしてる自覚はあるんだろうか。
「あれ、違うのか? おっかしいな、俺の勘って結構当たるって評判なんだが」
「馬鹿じゃないの、アンタ! そんなことで妬くとか、誰がっ……」
口をパクパクさせて怒りに震えるアルケミストに向かって、俺は懐から花かんざしを取り出して放り投げた。
思いもかけないものが飛んできて、アルケミストはあたふたしながらそいつをキャッチする。
「……何、これ」
「その時の侘びと、今日の侘び代だ。いらなきゃごみ箱にでも捨てるかどっかの店に売っちまっていいぜ。ああ、ポーションは今度また買いに来るから宜しくな、美人さん」
「……」
黙って俯き、そいつを見つめるアルケミストを後ろに、俺は最高の気分で家路についた。
さて。次にポーションを買いに行った時、あいつがつけているのは黒猫ヒュッケ耳か、はたまた花かんざしか。カートの中にあるのか、倉庫の中か。売っちまったか持ち歩いているか。
それを聞くだけでも楽しみだ。
俺が考え無しで動いたとき、そいつの意味は大抵後からついてくる。なら今回もきっとそうなんだろう。
なあ、そうだろ? 黒猫ヒュッケ耳のカワイイ生意気なアルケミスト。
手に入れた切欠はほんの些細なことだった。
「なあヴァン、贈り物って何が喜ばれる?」
こう見えても俺はGvギルドに所属している。脱衣なんてのを趣味で習得してたらスカウトされた。縛られるのは嫌いなんで、傭兵ってことで籍を置いている。
となるとそこそこ人脈も出切る訳で、今日も知り合いのハイプリと狩に行った帰りなんだが。そいつが清算時にいきなりそんなことを言い出しだ訳だ。
頬なんて染めちゃってまあ純なことで。からかいたくなるじゃないか。
「は。お前俺に惚れてたわけ?」
「ばっ、馬鹿っ! 俺はいたってノーマルだ! 誰がお前なんか!」
慌てて首をぶんぶん振り、バドンの如く真っ赤になった奴は頑として否定してくれる。いや肯定されても困るけどな。
「はいはいはい、んで相手は女な訳ね」
「……なんで解るんだ」
「お前がノーマルだって叫んだからだろ。さしずめ贈り主は──」
Gvギルドのこいつと仲の良い女スナの名を挙げかけると、図星だったらしいハイプリは手をばたばたさせる。
話を聞くと、今週の土曜は彼女が冒険者になった記念日らしい。先日スナに転職したばかりの祝いもあげたばかりではあるが、またプレゼントをしたいと。ご執心だねえ。
「そうだな。お前予算は」
「予算なら、装備を切り崩して幾らでも。どんなものでも用意する、彼女に喜んで貰いたいから」
「……あのなあ」
俺は思いつめたハイプリの肩を叩く。
「高価なものがすべてじゃないだろうが。『彼女に似合うもの』メインで考えてみたらどうだ? 自分が出した物で作ってもらったらそりゃー彼女の感慨もひとしおだぜ? あー、そうだな、今日の収集品で作れそうなものねぇかな」
今日俺らが行っていたのはオーディン神殿の入り口マップ。
その清算中だったのだが、清算アイテムの中に転がっていたものを俺は摘み上げる。何の因果か、何故だか知らないが二つもドロップしたそれ。
「花びら……? でも彼女はもう持ってて」
残念そうに首を振るハイプリの背中を、俺は勢い良く叩いた。
「馬鹿。こいつを細工してかんざしでも作ってやれよ。手作りの、自力で拾ったもので作ったプレゼント。こりゃ、女受けするぜ?」
とまあ、こんな感じで花かんざしが二つ作られた。何で二つなのかって、万が一職人が失敗したときにとわざわざ奴は二個分の材料を用意したのさ。
おまけに、俺に作成を立ち会わせた。俺がこの存在を知ることで逃げ道をなくし、臆することなく彼女に渡せるように。俺にはつき合わせたその謝礼としてこの花かんざしを貰ったわけだが……こんなもの俺にどうしろと。彼女と揃いでつけた日にゃ、いらん誤解を生みそうだ。
そんなわけで行き場を無くした花かんざしをなんとなく懐に入れたまま、俺はいつもの補充に出かけた。
行き先はプロの精錬所前。あの蜂蜜は今日もいるんだろうか。
「よっ」
案の定、そこにはけだるそうなアルケミストの姿があった。チビ羊も健在でアルケミストの足元の転がってるジャルゴンをがつがつ食っている。
それにしても、と俺は思う。俺の顔を見た途端の、いつにもまして不機嫌なオーラが漂い始めたのは、決して気のせいではない筈だ。
「……アンタか。何」
「俺は仮にも客だぜ? 笑顔笑顔。美人が台無しだぜ、お嬢さん」
「ちゃんと買ってくれるなら客扱いしてもいいけどね。この間、さんざ迷って買っていかなかったじゃないか」
「あー、んなこともあったな」
Gv直前にスリム白ポを買おうとしたんだが、耳打ちで在庫があるから買うなって指示を貰ってドタキャンしたんだった。
「でもそんなの良くあることだろ、迷った挙句かっていかないなんて」
「そうかもしれないけどね、ムカつくものはムカつくんだよ」
ぷいっと横を向いてふくれっつらを見せるケミ。
なんともまあ可愛らしいその生意気な美人顔を崩したくなった俺は、ちょいと相手を突付いてみる。
「なあアルケミストさん。それって、俺が他のケミが作ったポーション使ったかもしれないから妬いてたりして」
「はあ!?」
思った以上にいい反応に嬉しくなる。まったくカワイイねえ、顔真っ赤にしてる自覚はあるんだろうか。
「あれ、違うのか? おっかしいな、俺の勘って結構当たるって評判なんだが」
「馬鹿じゃないの、アンタ! そんなことで妬くとか、誰がっ……」
口をパクパクさせて怒りに震えるアルケミストに向かって、俺は懐から花かんざしを取り出して放り投げた。
思いもかけないものが飛んできて、アルケミストはあたふたしながらそいつをキャッチする。
「……何、これ」
「その時の侘びと、今日の侘び代だ。いらなきゃごみ箱にでも捨てるかどっかの店に売っちまっていいぜ。ああ、ポーションは今度また買いに来るから宜しくな、美人さん」
「……」
黙って俯き、そいつを見つめるアルケミストを後ろに、俺は最高の気分で家路についた。
さて。次にポーションを買いに行った時、あいつがつけているのは黒猫ヒュッケ耳か、はたまた花かんざしか。カートの中にあるのか、倉庫の中か。売っちまったか持ち歩いているか。
それを聞くだけでも楽しみだ。
モンク&ケミ (修羅&寝衣) (♂&♂)
うちにはちょっと変わった奴が住んでいる。
一人暮らしだった俺の家に来た居候、そいつの名前はアーク。出会ったときから記憶を失っていたノービスハイ。過去も、自分の名も、何の職だったのかさえ。
記憶喪失の原因は不明、医者も大聖堂もお手上げだった。乗りかかった船ってことで、アークは俺が引き取った。
アークの名前は俺がつけた。
いつかは俺の手を離れてどこかへいってしまうかもしれない、そんなことを思ってつけた名前。大昔の異教の聖典にある、箱舟の名前。
あちこちのギルド巡りをした結果、本当は「アイル」という名で過去はバードだったらしい事が判明したが、当の本人はアーチャーへの転職を拒み、アークと呼ばないと返事をしてくれない。
すっかり「アーク」と呼ばれることに慣れたノービスハイと、アークが居ることが当然になっている俺の日常。
──いつか、この日常が壊れる日が来るんだろうか。
「……なあ寝衣」
「ん? 何さ修羅。買うものと数は決まった?」
だるそうにこちらを見上げたのは顔見知りのアルケミスト、寝衣。
蜂蜜色をした毛先がツンっと跳ねた髪はこいつの性格そのまま。黙っていれば男にしては相当の美人だ。口を開いたら? 接客モードじゃないこいつの言葉の切れ味は中々のもんだと思う。
こいつの真の顔はランカーだか裏の薬屋だとか言われているが、俺にとってはそんなこと重要じゃない。ただなんとなく馬が合う相手という、俺にとってもっと大事な理由で、買い物があるときは大抵此処に来ている。
今日も此処に来た理由は足りなくなってきた白ポーションを補充する為だったんだが、俺の視線はある一点に集中していた。
「……何」
怪訝そうな目で寝衣が俺を見上げる。
そよそよと穏やかな風に揺れる寝衣の髪にしっかりと存在感を感じさせる精巧な細工が俺の目を惹いていた。
「それなんだけど」
「指示語で言われてもね。ちゃんと主語ってもんを入れて話してよ」
一見小憎たらしい口調も小気味良く感じるのは旧知の仲な所為なんだと思う。寝衣のこういう飾らない口調が俺にはかえって心地いい。
とりあえず言われた通りに主語を、というか説明を付け加える。
「お前が今つけてる、それ」
「ああ、花のかんざし?」
ふと表情を和らげた寝衣が頬を染める。その花のかんざしになにか曰くでもあるんだろうか。
「それってどうやって手に入れたんだ?」
「どうって。貰ったに決まってるだろ」
それは納得。おしゃれ装備は大抵貢がれてるって言ってたしな。まあ倉庫がすぐ一杯になって困るって愚痴だったが。他の奴が聞いたら贅沢者ってな風に怒りそうな話だ。
尤も、顧客との付き合いやら何やらで貰う方も色々と大変だってのは寝衣の話でわかったけど。
「へぇ。誰に」
「……どうでもいいじゃないか、そんな話」
ふいっと横を向いた寝衣の表情が明らかに気まずげだった。隣に居た小さな羊が餌を求めてか「めえ」と小さく鳴くと、寝衣は誤魔化すようにジャルゴンを地面に転がした。
気まずげではある。だが、アレはどちらかというと「不機嫌」ではなく「照れ」だろう。これまでにそれなりに付き合いはあるし、俺達は相手の表情からある程度の感情くらいは読める間柄だ。
寝衣の反応から「聞いてはいけない話」ではないと判断した俺は、更に突っ込んで追求してみる。
「確かにどうでもいいけど」
「じゃあいいだろ。で、このかんざしが何」
「隠されると気にはなる」
「…………」
暫しの沈黙の後、軽く息を吐いた寝衣が小さく呟いた。
「知り合いのチェイサーが投げて寄越したんだよ。それだけ」
それ以上は聞いてくれるな、と無言の合図を貰った俺は話をさくっと切り替えた。
「ああ、それでさ。その花かんざしなんだけど、普通はどうやって手に入れるんだ?」
「普通はって……露店じゃなくって意味だよね。ちょっとまって」
懐から小さな帳面を取り出して、寝衣はパラパラそいつの頁をめくる。
あった、ととあるページを開いて見せてくれる。そこに描かれていたのはゲフェンの街の地図だった。
「花びらと鋼鉄10個、あとは現金20.000z。それだけ持ってここに行けば作って貰えるよ」
「……自分で作ったり出来ないのか、これ」
「はあ?」
「いや、だからさ。自分で」
「出来なくはないと思うけど、作り方わかるの修羅」
「……見よう見まねで何とかなるんじゃねえ?」
はあ、と寝衣が呆れたように溜息を吐いた。
「ったく。わかったよ。アルゼンとはちょっとツテがあるから、特別に製法を聞いておいてあげるよ」
アルゼンってのは本来花のかんざしを作ってくれる奴の名前らしい。それにしても寝衣の顔の広さには毎度の事ながら感心する。
「わざわざ作ってあげるなんて、アンタにも恋人が出来たって訳?」
「そういう相手じゃないけどな」
「例の、一緒に住んでるって子?」
「ああ」
おどおどとしたアークの、あの金色の髪に、花を一輪咲かせてやれたらと思った。ちょっと可愛すぎるかもしれないが、寝衣がつけても似合うんだから問題ないだろう。たかが装飾品かもしれないが、身を飾る事で少しでも自信がつかないかと目論見もあった。
が、何よりアークが喜んでくれる顔が見たかった。どうせなら自分で作った物のが心が篭っていていい。
「修羅、前払いしてくれるとありがたいんだけど」
「幾ら?」
「とりあえず20,000z。足りなかったら後で請求するよ」
「サンキュ。じゃあ、宜しくな」
礼を言い、手を振って帰ろうとする俺の背中を寝衣の一言が引き止める。
「修羅」
「何だよ」
「それで、今日の買い物はどうするわけ?」
肝心のポーションを注文するのを忘れていた俺は、くるりと再度寝衣に振り返った。
そうして寝衣から作り方の書かれたメモを貰い、俺はそれを元に作成を始めた。
今、俺の手には作りかけの花のかんざしがある。
鍛冶彫金の素人が作っている分時間がかかる。大分形にはなってきたが、完成にはまだまだ少しかかりそうだ。
これが完成して、アークの頭を飾る時──俺達の日常は続いているだろうか。
そんなことを思いながら、俺は今日も大聖堂の裏で鋼鉄を磨き続ける。
花かんざしの完成は、まだ、遠い。
一人暮らしだった俺の家に来た居候、そいつの名前はアーク。出会ったときから記憶を失っていたノービスハイ。過去も、自分の名も、何の職だったのかさえ。
記憶喪失の原因は不明、医者も大聖堂もお手上げだった。乗りかかった船ってことで、アークは俺が引き取った。
アークの名前は俺がつけた。
いつかは俺の手を離れてどこかへいってしまうかもしれない、そんなことを思ってつけた名前。大昔の異教の聖典にある、箱舟の名前。
あちこちのギルド巡りをした結果、本当は「アイル」という名で過去はバードだったらしい事が判明したが、当の本人はアーチャーへの転職を拒み、アークと呼ばないと返事をしてくれない。
すっかり「アーク」と呼ばれることに慣れたノービスハイと、アークが居ることが当然になっている俺の日常。
──いつか、この日常が壊れる日が来るんだろうか。
「……なあ寝衣」
「ん? 何さ修羅。買うものと数は決まった?」
だるそうにこちらを見上げたのは顔見知りのアルケミスト、寝衣。
蜂蜜色をした毛先がツンっと跳ねた髪はこいつの性格そのまま。黙っていれば男にしては相当の美人だ。口を開いたら? 接客モードじゃないこいつの言葉の切れ味は中々のもんだと思う。
こいつの真の顔はランカーだか裏の薬屋だとか言われているが、俺にとってはそんなこと重要じゃない。ただなんとなく馬が合う相手という、俺にとってもっと大事な理由で、買い物があるときは大抵此処に来ている。
今日も此処に来た理由は足りなくなってきた白ポーションを補充する為だったんだが、俺の視線はある一点に集中していた。
「……何」
怪訝そうな目で寝衣が俺を見上げる。
そよそよと穏やかな風に揺れる寝衣の髪にしっかりと存在感を感じさせる精巧な細工が俺の目を惹いていた。
「それなんだけど」
「指示語で言われてもね。ちゃんと主語ってもんを入れて話してよ」
一見小憎たらしい口調も小気味良く感じるのは旧知の仲な所為なんだと思う。寝衣のこういう飾らない口調が俺にはかえって心地いい。
とりあえず言われた通りに主語を、というか説明を付け加える。
「お前が今つけてる、それ」
「ああ、花のかんざし?」
ふと表情を和らげた寝衣が頬を染める。その花のかんざしになにか曰くでもあるんだろうか。
「それってどうやって手に入れたんだ?」
「どうって。貰ったに決まってるだろ」
それは納得。おしゃれ装備は大抵貢がれてるって言ってたしな。まあ倉庫がすぐ一杯になって困るって愚痴だったが。他の奴が聞いたら贅沢者ってな風に怒りそうな話だ。
尤も、顧客との付き合いやら何やらで貰う方も色々と大変だってのは寝衣の話でわかったけど。
「へぇ。誰に」
「……どうでもいいじゃないか、そんな話」
ふいっと横を向いた寝衣の表情が明らかに気まずげだった。隣に居た小さな羊が餌を求めてか「めえ」と小さく鳴くと、寝衣は誤魔化すようにジャルゴンを地面に転がした。
気まずげではある。だが、アレはどちらかというと「不機嫌」ではなく「照れ」だろう。これまでにそれなりに付き合いはあるし、俺達は相手の表情からある程度の感情くらいは読める間柄だ。
寝衣の反応から「聞いてはいけない話」ではないと判断した俺は、更に突っ込んで追求してみる。
「確かにどうでもいいけど」
「じゃあいいだろ。で、このかんざしが何」
「隠されると気にはなる」
「…………」
暫しの沈黙の後、軽く息を吐いた寝衣が小さく呟いた。
「知り合いのチェイサーが投げて寄越したんだよ。それだけ」
それ以上は聞いてくれるな、と無言の合図を貰った俺は話をさくっと切り替えた。
「ああ、それでさ。その花かんざしなんだけど、普通はどうやって手に入れるんだ?」
「普通はって……露店じゃなくって意味だよね。ちょっとまって」
懐から小さな帳面を取り出して、寝衣はパラパラそいつの頁をめくる。
あった、ととあるページを開いて見せてくれる。そこに描かれていたのはゲフェンの街の地図だった。
「花びらと鋼鉄10個、あとは現金20.000z。それだけ持ってここに行けば作って貰えるよ」
「……自分で作ったり出来ないのか、これ」
「はあ?」
「いや、だからさ。自分で」
「出来なくはないと思うけど、作り方わかるの修羅」
「……見よう見まねで何とかなるんじゃねえ?」
はあ、と寝衣が呆れたように溜息を吐いた。
「ったく。わかったよ。アルゼンとはちょっとツテがあるから、特別に製法を聞いておいてあげるよ」
アルゼンってのは本来花のかんざしを作ってくれる奴の名前らしい。それにしても寝衣の顔の広さには毎度の事ながら感心する。
「わざわざ作ってあげるなんて、アンタにも恋人が出来たって訳?」
「そういう相手じゃないけどな」
「例の、一緒に住んでるって子?」
「ああ」
おどおどとしたアークの、あの金色の髪に、花を一輪咲かせてやれたらと思った。ちょっと可愛すぎるかもしれないが、寝衣がつけても似合うんだから問題ないだろう。たかが装飾品かもしれないが、身を飾る事で少しでも自信がつかないかと目論見もあった。
が、何よりアークが喜んでくれる顔が見たかった。どうせなら自分で作った物のが心が篭っていていい。
「修羅、前払いしてくれるとありがたいんだけど」
「幾ら?」
「とりあえず20,000z。足りなかったら後で請求するよ」
「サンキュ。じゃあ、宜しくな」
礼を言い、手を振って帰ろうとする俺の背中を寝衣の一言が引き止める。
「修羅」
「何だよ」
「それで、今日の買い物はどうするわけ?」
肝心のポーションを注文するのを忘れていた俺は、くるりと再度寝衣に振り返った。
そうして寝衣から作り方の書かれたメモを貰い、俺はそれを元に作成を始めた。
今、俺の手には作りかけの花のかんざしがある。
鍛冶彫金の素人が作っている分時間がかかる。大分形にはなってきたが、完成にはまだまだ少しかかりそうだ。
これが完成して、アークの頭を飾る時──俺達の日常は続いているだろうか。
そんなことを思いながら、俺は今日も大聖堂の裏で鋼鉄を磨き続ける。
花かんざしの完成は、まだ、遠い。
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● このブログはクロストラブル/38.1の高山アキが執筆する、サイトやイベント関連のご連絡・萌語りなどの雑記と、小説の新作をupしておく保管庫場となっております。
● 小説は、サイト内に移動されたものから、一定期間をおいてこちらからは削除させていただきます。
● ジャンル・CPなどよろずとなっておりますので、各記事の説明書きをお読みの上、閲覧ください。
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