日記 + 最新小説保管 / 創作・版権二次創作 / 同性愛要素、性表現含
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GvG話 LK×AX(♂×♂) (1-1)
雨が降る。
季節外れの長雨は地面を濡らし、外気を冷やし、部屋の空気までも冷やす。
湿気た薪が暖炉の中で白い煙を上げて燻っていた。
「……では、どうあっても考え直す気はない、と」
「お前の言い分はわかるがな、俺が考えうる限り最良の選択だ。向こうの内諾ももぎ取ってきた。今度のギルド会議にかけて過半数の承認が出たら実行に移す」
自信たっぷりにそう笑むロードナイトは、紅いマントに滴る雫を意に介せず、ギルド宿舎の一室に腰を落ち着ける。
雨の中用事を済ませ、たった今帰舎したばかりの彼は、宿舎のドアを開けたところで待ち構えていたアサシンクロスに捕まった。
参謀であるところの彼は、ギルマスであるロードナイトの用事の邪魔をしないようにとWisも控え、ただ帰りを待っていたのだ。
「確かに、戦術的にもあそこと組むメリットはある。けれど、俺が考えるにデメリットのほうが大きいと思う」
「俺を納得させられるだけの材料があるってんなら聞かせてみろ」
「……それは無理だろう」
今まで散々説得してきたのだから、とアサシンクロスが肩を落とし、ふう、と長いため息を吐く。
ため息が白く凝り、部屋に溶けた。
アサシンクロスは無言のまま立ち上がり、ロードナイトのマントを外す。
普段からアサシンクロスの好きなようにさせているロードナイトは、洗い立てのタオルでマントの水気を拭き取っていく相手の様子を眺めつつ言葉を待つ。
視線を感じたアサシンクロスは、やれやれと言った風に口を開いた。
「ギルド自体の評判は悪くない。内部もそう不安定というわけでもなさそうだし、面子を見ても戦力的に問題はない。同盟を組むには申し分ないし、むしろ組んでくれるというのならそれは喜ぶべきだろう。規模的にはあちらの方が大きいのだから」
参謀という立場柄、情報収集に力を入れているアサシンクロスは、ロードナイトが同盟の打診をしてきたギルドを正確に評する。
「そこまで判ってて反対するか?」
「問題があるのはギルドメンバーではない」
「ふん。奥歯に物が挟まったような物言いは好きじゃねぇな」
「向こうのギルドマスター……彼の目には、野心が見える」
「砦の取り合いやってる奴で野心のない奴なんていねぇよ」
ロードナイトは先ほどまで会談していた相手を思い浮かべる。
腕っ節の良いオーラを纏ったホワイトスミスは強い光を瞳に宿し、人を魅了する不思議な力を持っていた。カリスマ、とでもいうのだろうか。直接会って話したのは今日が初めてだったのだが、不思議な求心力を持った人物だった。
例えるなら、爪を隠さずに見せ付けるタイプの猛禽類。その爪にかかってみたいと思わせる、上に立つものの空気を備えた男だった。
──尤も、自分もギルドメンバーに似た評価を貰っているのを当のロードナイトは知る由もないが。
「彼が危険である以上、同盟を組むべきではないと思う」
「要するにお前はうちが向こうに利用されるのを怖がってんだろ?」
「……それがわかっているなら」
普段の人当たり良い仮面を脱ぎ捨てたロードナイトは、参謀である彼にしか見せない表情で凄絶に笑い、アサシンクロスの言葉を遮る。
「この俺が食われるとでも?」
凄みを増したロードナイトの口調に、アサシンクロスは息を呑んだ。
「この俺を利用する? はん、上等じゃねぇか。その前に利用してやる。食われる前に食ってやるさ。それで文句はないな?」
アサシンクロスはロードナイトを信頼している。彼は出来ないことは口にしない男だった。彼がそういうならば、やってのけるだろう。
それでも胸中に広がる暗い感情を払拭できない。果たしてそれはギルドマスターを心配しての思いなのか、ギルドの行く末を案じての思いなのか、それともまったく別の思いなのか。
わかるのは、アサシンクロスの直感では向こうのギルドマスターは危険だという事。
だが説得に失敗した以上、これ以上の論議は意味がない。
仕えるべきギルドマスターが決めた事なのだ──最終的にそう自分を納得させたアサシンクロスは、承服の言葉を呟く。
「……わかった」
雨はまだ、止みそうにない。
今度の攻城戦は、雨の中で行う事になりそうだった。
季節外れの長雨は地面を濡らし、外気を冷やし、部屋の空気までも冷やす。
湿気た薪が暖炉の中で白い煙を上げて燻っていた。
「……では、どうあっても考え直す気はない、と」
「お前の言い分はわかるがな、俺が考えうる限り最良の選択だ。向こうの内諾ももぎ取ってきた。今度のギルド会議にかけて過半数の承認が出たら実行に移す」
自信たっぷりにそう笑むロードナイトは、紅いマントに滴る雫を意に介せず、ギルド宿舎の一室に腰を落ち着ける。
雨の中用事を済ませ、たった今帰舎したばかりの彼は、宿舎のドアを開けたところで待ち構えていたアサシンクロスに捕まった。
参謀であるところの彼は、ギルマスであるロードナイトの用事の邪魔をしないようにとWisも控え、ただ帰りを待っていたのだ。
「確かに、戦術的にもあそこと組むメリットはある。けれど、俺が考えるにデメリットのほうが大きいと思う」
「俺を納得させられるだけの材料があるってんなら聞かせてみろ」
「……それは無理だろう」
今まで散々説得してきたのだから、とアサシンクロスが肩を落とし、ふう、と長いため息を吐く。
ため息が白く凝り、部屋に溶けた。
アサシンクロスは無言のまま立ち上がり、ロードナイトのマントを外す。
普段からアサシンクロスの好きなようにさせているロードナイトは、洗い立てのタオルでマントの水気を拭き取っていく相手の様子を眺めつつ言葉を待つ。
視線を感じたアサシンクロスは、やれやれと言った風に口を開いた。
「ギルド自体の評判は悪くない。内部もそう不安定というわけでもなさそうだし、面子を見ても戦力的に問題はない。同盟を組むには申し分ないし、むしろ組んでくれるというのならそれは喜ぶべきだろう。規模的にはあちらの方が大きいのだから」
参謀という立場柄、情報収集に力を入れているアサシンクロスは、ロードナイトが同盟の打診をしてきたギルドを正確に評する。
「そこまで判ってて反対するか?」
「問題があるのはギルドメンバーではない」
「ふん。奥歯に物が挟まったような物言いは好きじゃねぇな」
「向こうのギルドマスター……彼の目には、野心が見える」
「砦の取り合いやってる奴で野心のない奴なんていねぇよ」
ロードナイトは先ほどまで会談していた相手を思い浮かべる。
腕っ節の良いオーラを纏ったホワイトスミスは強い光を瞳に宿し、人を魅了する不思議な力を持っていた。カリスマ、とでもいうのだろうか。直接会って話したのは今日が初めてだったのだが、不思議な求心力を持った人物だった。
例えるなら、爪を隠さずに見せ付けるタイプの猛禽類。その爪にかかってみたいと思わせる、上に立つものの空気を備えた男だった。
──尤も、自分もギルドメンバーに似た評価を貰っているのを当のロードナイトは知る由もないが。
「彼が危険である以上、同盟を組むべきではないと思う」
「要するにお前はうちが向こうに利用されるのを怖がってんだろ?」
「……それがわかっているなら」
普段の人当たり良い仮面を脱ぎ捨てたロードナイトは、参謀である彼にしか見せない表情で凄絶に笑い、アサシンクロスの言葉を遮る。
「この俺が食われるとでも?」
凄みを増したロードナイトの口調に、アサシンクロスは息を呑んだ。
「この俺を利用する? はん、上等じゃねぇか。その前に利用してやる。食われる前に食ってやるさ。それで文句はないな?」
アサシンクロスはロードナイトを信頼している。彼は出来ないことは口にしない男だった。彼がそういうならば、やってのけるだろう。
それでも胸中に広がる暗い感情を払拭できない。果たしてそれはギルドマスターを心配しての思いなのか、ギルドの行く末を案じての思いなのか、それともまったく別の思いなのか。
わかるのは、アサシンクロスの直感では向こうのギルドマスターは危険だという事。
だが説得に失敗した以上、これ以上の論議は意味がない。
仕えるべきギルドマスターが決めた事なのだ──最終的にそう自分を納得させたアサシンクロスは、承服の言葉を呟く。
「……わかった」
雨はまだ、止みそうにない。
今度の攻城戦は、雨の中で行う事になりそうだった。
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白及×藤乃 (羽山×ファイ) 平安 18禁
古泉×キョン (1-2) 18禁
古泉×キョン (1-1)
例えば、幼い頃に信じていた怪奇現象やUFOの類を年齢と共に信じられなくなっていくように、俺は皆と同じ様にごく平均的な成長を遂げてきたといっても過言ではないと思う。
この世界における平均的一般人代表の俺が、いったいいつどこで人生の岐路を間違えたのか。
それは間違いなく今年の春だと断言しよう。
人生の岐路だなどと何を大げさなと大抵の人は思うのだろうが、俺にとってはたかが等と笑っていられる話じゃあない。
なにせ真後ろに着席していた見ている分には文句なしの不機嫌そうな美少女に話しかけさえしなければ、俺は涼宮ハルヒが作ったSOS団というけったいな部、いや同好会ですらないその集まりに引っ張り込まれることもなく。
──ある意味ハルヒより問題児だった、「あいつ」に会うという人生最大の過ちを犯さずに済んだのだから。
何の変哲もなく何の予感も感じさせない、いつもの放課後。
ホームルームが終わるとすぐに部室に直行することが日常化していた俺は、珍しく誰もいない部室でなんとなくパソコンに向かい、なんとなくネットサーフィンをしていた。朝比奈さんは何処に行ってしまったんだろうか、彼女のお茶と見目麗しいコスプレと、あの優しい天使の笑顔がこの部室で俺の唯一の楽しみにだというのに。
因みに俺が部室に来た時に居た長門は学校の図書室に行くといってそうそうに部屋を出て行ってしまった。どうやら誰かが来るのを待っていたようだ。普段なら部室から梃子でも動かなさそうなのに、学校の図書室なんて一体誰の入れ知恵なんだか。
代わりの店番か? 俺は。
それはともかく、朝比奈さんの美味しいお茶を待っていた俺の、その部室でのセカンド・コンタクトは、これまた二番目に逢っても嬉しくない人物だった。尤も、逢っても嬉しくない人物ぶっちぎり一位であるハルヒよりは遥かにマシだったが。
部室のドアが開いて現れたのは、古泉一樹。自称超能力少年、このSOS団の副団長を務めている男だ。
副団長っていってもそりゃあ単なる肩書きで何が偉いわけもなく、ハルヒにこき使われるのは俺達の肩書きである「団員その一」や「団員その二」と同じなんだがな。要するに、決して羨ましいわけではない。
「やあ、貴方一人でしたか」
「ああ」
相も変わらず胡散臭げで八方美人的な笑顔を浮かべる古泉を前に、俺は画面から目を離さずに生返事を返す。
別に面白いサイトを見ているからではない。単に古泉の顔を見る気がしなかったからだ。だってそうだろう、わざわざあの顔に張り付いた笑顔を見るくらいならパソコンの画面を見ていたほうが何ぼかマシってなもんだ。どうせなら極秘の朝比奈さんフォルダから抜粋した特選画像でも見るか。
だが俺はフォルダを開こうとしていた手を止めた。鞄をテーブルの上に置いた古泉は、てくてくと近寄ってきたからだ。相手が谷口辺りなら絶対の口外無用を条件のうえで朝比奈さん特選画像を見せてやってもいいかもしれない。だが古泉は普段から愛らしい朝比奈さんのお姿を拝謁するという特権を手にしているんだ。別に見せてやる事もないだろう。
俺の傍に立った古泉は、いつもどおりの胡散臭い笑顔を浮かべながらネットサーフィンを続ける俺の肩に手を置いた。何をする気持ち悪い、と反論を返す前に古泉が口を開いた。
「涼宮さんから伝言を承ってきました」
「涼宮から?」
「貴方宛に」
「俺に?」
珍しい。というか同じクラスな上に席が前である俺に直接言えばいいものを、わざわざ古泉に残すというのはどういうつもりなんだハルヒの奴。
「ええ。今日は朝比奈さんを連れての所用があるので、部活を欠席するとの事です」
それで今日は二人の姿が見えないのか。
因みに、朝比奈さんを連れてという箇所に俺が反応したのは言うまでもない。なにをやらかすつもりなのか、朝比奈さんを今度は何の毒牙にかけるつもりなのだろうかハルヒは。
待てよ? ハルヒが来ない、おまけに朝比奈さんまで来ないなら今日の部活は休みでいいんじゃないか。そうだな、長門が戻ってきたときの為の留守番はこいつに任せて、俺は有意義な時間を作るためにさっさと帰ろう。
そんな事を思っていたのだが、俺は余程考えに耽っていたらしい。気づいたとき、俺の顎は古泉によって持ち上げられていた。
……なんだ? この展開は。
「……古泉」
「なんでしょうか?」
「この状態はなんだ?」
なんと説明すればいいか。椅子に座った俺、その後ろというか横に立つ古泉。古泉の手が俺の顎を持ち上げて居る。放課後、二人きりの部室で交わされる視線。はは、このままでは学園ラブコメディのワン・シーンの一丁上がりだ。
だがいかんせん相手が古泉では、曲者そうな顔つきがネックだな。優男というか、男の俺から見ても決して作りは悪くないのだが、笑顔の裏で何を考えているのか底が知れない。案外、浅いのかもしれないが。
となるとこのシチュエーションはさしずめ、売られてきた女郎を品定めをする悪代官……やめよう。自分で言っててどうかと思うぞそれは。
それ以前に俺と古泉でラブコメなんて、文化祭で撮ったあの迷作映画以上に出演御免こうむりたい。
「先程申し上げたとおり、涼宮さんは本日いらっしゃいません」
「ああ」
だからそれとこの状況の何が関係するんだ。
「朝比奈さんは涼宮さんと一緒ですし、長門さんは……」
「長門なら図書室に行ったぞ」
「ええ、知ってます。先ほど見かけましたから」
だからなんなんだ。相変わらず勿体つける喋り方をする奴だなこいつは。さっさと結論を言って欲しいものだ。その前にこの手をさっさとどけろ、気色悪い。
「と、言う事はです。今日は邪魔者が入らないという事なんですよ」
俺はお前と二人きりな時点で今すぐ帰りたい気分だ、と言おうとした。
したのだが。
俺の発しようとした言葉は空気にもならずに喉の奥深くに飲み込まれていってしまった。
「っ!」
有り体に言えば、俺は古泉に口を塞がれてしまったのだ。口を口で、つまりマウストゥマウスで、つまりキスをされて……おいおい、冗談じゃない!
男とのキスなんて嬉しいわけもない。数秒間真っ白だった頭を総動員して、俺は精一杯の力を込めて古泉を押しのけようと抵抗してやったが、なにしろ古泉という男は勉強もスポーツもそつなくこなす奴であって、つまり腕力もそこそこある。
俺はいつの間にかしっかり椅子に押さえつけられ、身動きをとることさえ難しくなっていた。
「こういうことです。おとなしく観念して下さい」
悪魔のような笑みを浮かべて、唇を離した古泉はそう言ったのだった。
この世界における平均的一般人代表の俺が、いったいいつどこで人生の岐路を間違えたのか。
それは間違いなく今年の春だと断言しよう。
人生の岐路だなどと何を大げさなと大抵の人は思うのだろうが、俺にとってはたかが等と笑っていられる話じゃあない。
なにせ真後ろに着席していた見ている分には文句なしの不機嫌そうな美少女に話しかけさえしなければ、俺は涼宮ハルヒが作ったSOS団というけったいな部、いや同好会ですらないその集まりに引っ張り込まれることもなく。
──ある意味ハルヒより問題児だった、「あいつ」に会うという人生最大の過ちを犯さずに済んだのだから。
何の変哲もなく何の予感も感じさせない、いつもの放課後。
ホームルームが終わるとすぐに部室に直行することが日常化していた俺は、珍しく誰もいない部室でなんとなくパソコンに向かい、なんとなくネットサーフィンをしていた。朝比奈さんは何処に行ってしまったんだろうか、彼女のお茶と見目麗しいコスプレと、あの優しい天使の笑顔がこの部室で俺の唯一の楽しみにだというのに。
因みに俺が部室に来た時に居た長門は学校の図書室に行くといってそうそうに部屋を出て行ってしまった。どうやら誰かが来るのを待っていたようだ。普段なら部室から梃子でも動かなさそうなのに、学校の図書室なんて一体誰の入れ知恵なんだか。
代わりの店番か? 俺は。
それはともかく、朝比奈さんの美味しいお茶を待っていた俺の、その部室でのセカンド・コンタクトは、これまた二番目に逢っても嬉しくない人物だった。尤も、逢っても嬉しくない人物ぶっちぎり一位であるハルヒよりは遥かにマシだったが。
部室のドアが開いて現れたのは、古泉一樹。自称超能力少年、このSOS団の副団長を務めている男だ。
副団長っていってもそりゃあ単なる肩書きで何が偉いわけもなく、ハルヒにこき使われるのは俺達の肩書きである「団員その一」や「団員その二」と同じなんだがな。要するに、決して羨ましいわけではない。
「やあ、貴方一人でしたか」
「ああ」
相も変わらず胡散臭げで八方美人的な笑顔を浮かべる古泉を前に、俺は画面から目を離さずに生返事を返す。
別に面白いサイトを見ているからではない。単に古泉の顔を見る気がしなかったからだ。だってそうだろう、わざわざあの顔に張り付いた笑顔を見るくらいならパソコンの画面を見ていたほうが何ぼかマシってなもんだ。どうせなら極秘の朝比奈さんフォルダから抜粋した特選画像でも見るか。
だが俺はフォルダを開こうとしていた手を止めた。鞄をテーブルの上に置いた古泉は、てくてくと近寄ってきたからだ。相手が谷口辺りなら絶対の口外無用を条件のうえで朝比奈さん特選画像を見せてやってもいいかもしれない。だが古泉は普段から愛らしい朝比奈さんのお姿を拝謁するという特権を手にしているんだ。別に見せてやる事もないだろう。
俺の傍に立った古泉は、いつもどおりの胡散臭い笑顔を浮かべながらネットサーフィンを続ける俺の肩に手を置いた。何をする気持ち悪い、と反論を返す前に古泉が口を開いた。
「涼宮さんから伝言を承ってきました」
「涼宮から?」
「貴方宛に」
「俺に?」
珍しい。というか同じクラスな上に席が前である俺に直接言えばいいものを、わざわざ古泉に残すというのはどういうつもりなんだハルヒの奴。
「ええ。今日は朝比奈さんを連れての所用があるので、部活を欠席するとの事です」
それで今日は二人の姿が見えないのか。
因みに、朝比奈さんを連れてという箇所に俺が反応したのは言うまでもない。なにをやらかすつもりなのか、朝比奈さんを今度は何の毒牙にかけるつもりなのだろうかハルヒは。
待てよ? ハルヒが来ない、おまけに朝比奈さんまで来ないなら今日の部活は休みでいいんじゃないか。そうだな、長門が戻ってきたときの為の留守番はこいつに任せて、俺は有意義な時間を作るためにさっさと帰ろう。
そんな事を思っていたのだが、俺は余程考えに耽っていたらしい。気づいたとき、俺の顎は古泉によって持ち上げられていた。
……なんだ? この展開は。
「……古泉」
「なんでしょうか?」
「この状態はなんだ?」
なんと説明すればいいか。椅子に座った俺、その後ろというか横に立つ古泉。古泉の手が俺の顎を持ち上げて居る。放課後、二人きりの部室で交わされる視線。はは、このままでは学園ラブコメディのワン・シーンの一丁上がりだ。
だがいかんせん相手が古泉では、曲者そうな顔つきがネックだな。優男というか、男の俺から見ても決して作りは悪くないのだが、笑顔の裏で何を考えているのか底が知れない。案外、浅いのかもしれないが。
となるとこのシチュエーションはさしずめ、売られてきた女郎を品定めをする悪代官……やめよう。自分で言っててどうかと思うぞそれは。
それ以前に俺と古泉でラブコメなんて、文化祭で撮ったあの迷作映画以上に出演御免こうむりたい。
「先程申し上げたとおり、涼宮さんは本日いらっしゃいません」
「ああ」
だからそれとこの状況の何が関係するんだ。
「朝比奈さんは涼宮さんと一緒ですし、長門さんは……」
「長門なら図書室に行ったぞ」
「ええ、知ってます。先ほど見かけましたから」
だからなんなんだ。相変わらず勿体つける喋り方をする奴だなこいつは。さっさと結論を言って欲しいものだ。その前にこの手をさっさとどけろ、気色悪い。
「と、言う事はです。今日は邪魔者が入らないという事なんですよ」
俺はお前と二人きりな時点で今すぐ帰りたい気分だ、と言おうとした。
したのだが。
俺の発しようとした言葉は空気にもならずに喉の奥深くに飲み込まれていってしまった。
「っ!」
有り体に言えば、俺は古泉に口を塞がれてしまったのだ。口を口で、つまりマウストゥマウスで、つまりキスをされて……おいおい、冗談じゃない!
男とのキスなんて嬉しいわけもない。数秒間真っ白だった頭を総動員して、俺は精一杯の力を込めて古泉を押しのけようと抵抗してやったが、なにしろ古泉という男は勉強もスポーツもそつなくこなす奴であって、つまり腕力もそこそこある。
俺はいつの間にかしっかり椅子に押さえつけられ、身動きをとることさえ難しくなっていた。
「こういうことです。おとなしく観念して下さい」
悪魔のような笑みを浮かべて、唇を離した古泉はそう言ったのだった。
生体研究所 ハワード×エレメス (♂×♂)
それはエレメスがいつもの通り二階の様子を見に行った帰りのことだった。
遠目ながら廊下の隅に暗い影を発見したエレメスは思わず敵かと身構えたが、よくよく見るとそれは見知った背中。
「ハワード?」
ひざを突いて倒れこんでいるのは紛れもなくハワード・アルトアイゼン。常に明るくムードメーカーであり、鍛冶の腕だけでなくエレメスを困らせ怒らせることにかけても天下一品の腕を持つ。
だが今はその明るさは鳴りを潜め、白いシャツに点々と残る返り血が死闘の後を伺わせる。
「ハワード、大丈夫か」
ハワードに不用意に近づけば何をされるか解らない──今までの教訓からそれを身に染みてわかっているエレメスだったが、流石にこんな状態を放っておくわけにもいかない。
早くマーガレッタに治療をして貰うべきだろうと踏んだエレメスはハワードに手を伸ばすが、返ってきたのは意外な一言だった。
「……俺に、触るな」
背中を向いたままなので表情は解らない。
だがその声に潜む陰惨な、そして冷酷な響きにエレメスは一瞬たじろぐ。
ハワードのこんな声を聞いたことがあっただろうかと記憶を手繰り寄せるが、少なくともこの生体研究所で目が覚めてからは聞いたことがない。
「何を言っている。随分と手酷くやられた様子じゃないか。立てるか? 肩を貸す」
一体何があったのか解らないが、引きずってでもマーガレッタのところへ連れて行こうとエレメスはハワードの肩に手を乗せた。
「触るんじゃねぇって言ってるだろうが!」
肩に置いた手を乱暴に振り払われ、怒号を浴びせられたエレメスは呆気に取られた風でハワードをまじまじと見つめた。
これは一体誰なのだ。自信たっぷりで飄々として、皆を和ませる顔はどこにもない。
漸く顔を上げたハワードは、見え見えの作り笑いで気まずそうに頭をかいた。
「悪ぃ。ちょいと一人になりたいんだわ。特にお前には見ていられたくない。マーガレッタのお茶会までには戻るから、行ってくれないか?」
そのバツの悪そうな作り笑いを見たエレメスは、何故そんなことを言っているのかその理由に思い至った。
ハワードという男はおちゃらけているようで、とてつもなくプライドが高い。特に仲間を護るという点においてはセイレンと先を争って後衛の壁になる。
それはとりもなおさず戦闘に対して絶対の自信があるということを示している。
敵を撃退したは良いが深手を負ってしまったというのは、ハワードの矜持を傷つける出来事なのだろう。
「……お茶会までには戻るんだな?」
「ああ」
「二つほど聞きたいことがある。それを聞いたなら下がろう」
「なんだ?」
「敵は撃退したのだな?」
「ハッ、この俺がネズミを見逃すとでも?」
「なら結構」
予想通りの答えにエレメスは頷く。
「で、もう一つは」
「……俺に出来る事は?」
「ならここにチューでもしてもらおうか」
へらっと笑って自分の口を指差し、いつものように軽口を叩くハワードに、エレメスは額に手をあてて溜息を吐いた。
「……一度痛い目を見たほうがいいかもしれないな、お前は」
まったく、と呆れはしたが、少しでも普段の様子が戻ってきていることに安堵する。
「冗談だ。半分本気だけどな。まあとっとと向こうに行ってくれ。皆には言うんじゃねぇぞ」
そう言って手をひらひら振るハワードの笑顔に心の痛みを感じたエレメスは、普段ならば絶対に取らない行動に出る。
「……これが限界だ」
座り込んだままのエレメスを見上げているハワードの額に、ほんの一瞬、そっと口付ける。
「……へ?」
「……っ、それではな!」
ぽかーんとしたハワードの顔が変化する前に我に返ったエレメスは、羞恥の余り慌ててクローキングで床に潜る。
「お、おいっ、待てコラ!」
ハワードの抑止を勿論聞く気などない。
顔を真っ赤にしたエレメスはクローキングしたまま超特急でその場から離脱した。
気の迷いなのだ。ハワードの様子を見ていたら、その願いくらい聞いてやっても良いのではないかと思って──自問自答を繰り返しながらエレメスは生体研究所の廊下を進んだ。
遠目ながら廊下の隅に暗い影を発見したエレメスは思わず敵かと身構えたが、よくよく見るとそれは見知った背中。
「ハワード?」
ひざを突いて倒れこんでいるのは紛れもなくハワード・アルトアイゼン。常に明るくムードメーカーであり、鍛冶の腕だけでなくエレメスを困らせ怒らせることにかけても天下一品の腕を持つ。
だが今はその明るさは鳴りを潜め、白いシャツに点々と残る返り血が死闘の後を伺わせる。
「ハワード、大丈夫か」
ハワードに不用意に近づけば何をされるか解らない──今までの教訓からそれを身に染みてわかっているエレメスだったが、流石にこんな状態を放っておくわけにもいかない。
早くマーガレッタに治療をして貰うべきだろうと踏んだエレメスはハワードに手を伸ばすが、返ってきたのは意外な一言だった。
「……俺に、触るな」
背中を向いたままなので表情は解らない。
だがその声に潜む陰惨な、そして冷酷な響きにエレメスは一瞬たじろぐ。
ハワードのこんな声を聞いたことがあっただろうかと記憶を手繰り寄せるが、少なくともこの生体研究所で目が覚めてからは聞いたことがない。
「何を言っている。随分と手酷くやられた様子じゃないか。立てるか? 肩を貸す」
一体何があったのか解らないが、引きずってでもマーガレッタのところへ連れて行こうとエレメスはハワードの肩に手を乗せた。
「触るんじゃねぇって言ってるだろうが!」
肩に置いた手を乱暴に振り払われ、怒号を浴びせられたエレメスは呆気に取られた風でハワードをまじまじと見つめた。
これは一体誰なのだ。自信たっぷりで飄々として、皆を和ませる顔はどこにもない。
漸く顔を上げたハワードは、見え見えの作り笑いで気まずそうに頭をかいた。
「悪ぃ。ちょいと一人になりたいんだわ。特にお前には見ていられたくない。マーガレッタのお茶会までには戻るから、行ってくれないか?」
そのバツの悪そうな作り笑いを見たエレメスは、何故そんなことを言っているのかその理由に思い至った。
ハワードという男はおちゃらけているようで、とてつもなくプライドが高い。特に仲間を護るという点においてはセイレンと先を争って後衛の壁になる。
それはとりもなおさず戦闘に対して絶対の自信があるということを示している。
敵を撃退したは良いが深手を負ってしまったというのは、ハワードの矜持を傷つける出来事なのだろう。
「……お茶会までには戻るんだな?」
「ああ」
「二つほど聞きたいことがある。それを聞いたなら下がろう」
「なんだ?」
「敵は撃退したのだな?」
「ハッ、この俺がネズミを見逃すとでも?」
「なら結構」
予想通りの答えにエレメスは頷く。
「で、もう一つは」
「……俺に出来る事は?」
「ならここにチューでもしてもらおうか」
へらっと笑って自分の口を指差し、いつものように軽口を叩くハワードに、エレメスは額に手をあてて溜息を吐いた。
「……一度痛い目を見たほうがいいかもしれないな、お前は」
まったく、と呆れはしたが、少しでも普段の様子が戻ってきていることに安堵する。
「冗談だ。半分本気だけどな。まあとっとと向こうに行ってくれ。皆には言うんじゃねぇぞ」
そう言って手をひらひら振るハワードの笑顔に心の痛みを感じたエレメスは、普段ならば絶対に取らない行動に出る。
「……これが限界だ」
座り込んだままのエレメスを見上げているハワードの額に、ほんの一瞬、そっと口付ける。
「……へ?」
「……っ、それではな!」
ぽかーんとしたハワードの顔が変化する前に我に返ったエレメスは、羞恥の余り慌ててクローキングで床に潜る。
「お、おいっ、待てコラ!」
ハワードの抑止を勿論聞く気などない。
顔を真っ赤にしたエレメスはクローキングしたまま超特急でその場から離脱した。
気の迷いなのだ。ハワードの様子を見ていたら、その願いくらい聞いてやっても良いのではないかと思って──自問自答を繰り返しながらエレメスは生体研究所の廊下を進んだ。
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● このブログはクロストラブル/38.1の高山アキが執筆する、サイトやイベント関連のご連絡・萌語りなどの雑記と、小説の新作をupしておく保管庫場となっております。
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