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日記 + 最新小説保管 / 創作・版権二次創作 / 同性愛要素、性表現含
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11/11(緑黒 帝光時代 女性向)
11/11はポッキーの日と言うことでSSを書いてみました。
帝光時代の緑間さんと黒子っちのお話です。

……去年から書きかけだったとか言うのは内緒です。
ええ内緒ですったら。


では続きを読むからどうぞなのです。

「……何のつもりなのだよ、突然」
 若干苛々とした表情の緑間が、訪問者の顔を胡乱げに見つめた――内心嬉しいと思っているのに、こんな態度をとってしまう自分に嫌悪しつつ、大きくため息を吐いた。
 練習のない日曜日。おは朝の週末占いでは自宅に居るのが吉とあったので、緑間はその通り一日家で過ごす予定だった。
 そこに、チームメイトであり「一応」付き合っている恋人の黒子テツヤが何故かアポもなしに訪ねてきた。今日は家に誰も居ないので、とりあえず自分の部屋に招待し、客用のティーセットに紅茶を注いで出し――今に至る。
 テーブルを挟んで向かい合って座り、温かいカモミールティを一口飲んだ緑間は、ふうと息を吐いた。
 普段見ることのない、私服の黒子が真向かいに座っているというだけで若干緊張が走る。飾り気のない薄水色のシャツに無地の黒いズボンという極めてシンプルな格好だが、よく似合っている。
「迷惑でしたか」
「そうは言っていないのだよ」
「何か予定があったとか」
「今日はおは朝の占いで家に居るのがいいとあったから、外出する予定はない」
「なら良かったです」
 こちらの質問の回答になっていないのだが、と緑間は眉間に皺を寄せた。
 ちなみに二人の関係に「一応」とカギカッコがついてしまうのには、さして深くもない理由がある。
 たまたま部室で黒子と二人になったとき、唐突に自分のことを好きかと聞かれ、密かに想いを寄せていた緑間は戸惑いながら頷いた。そのときの黒子の返答は「ボクもです、付き合ってくれませんか」だった。絶句した緑間が返事をする前に他の部員が部室へと入ってきてしまい、うやむやになり──今に至る。
 それ以降二人きりで話す機会もなく、思えば携帯番号すら交換していなかった。自宅番号は勿論知っているが、いきなり自宅へ電話をかけるのは流石にはばかられたのだ。
 第一、電話をかけたところで何を話したら良いのか判らなかった。
 なので部活で毎日顔をつき合わせているにもかかわらず、その話はおろか携帯番号を聞きだすことすら出来なかったのである。
 先日、何かを察したらしき赤司が「真太郎。テツヤの携帯番号、要るか?」とすました顔で聞いてきたが、全てわかったような物言いをされたのに頬がひくつき、「要らないのだよ」とすげなく断ってしまったのもまずかった。
 あそこで素直に聞いておけば、少なくとも黒子に自分の番号を教える切欠にもなったし、そうすれば流れでメアドも交換できて、今日来るというアポを黒子もとってくれただろうに。
 それはさておき──黒子が今日、いったい何の用件で自分を訪ねたのかが未だ謎のままだった。
 もしかして、先日の話の続きをしようというのか。家族が誰も居ない家に自室で二人きりというシチュエーションの中では、確かに邪魔が入らずにすむので良いかもしれない。
 まったく先が読めない緑間は、相手の出方を促すより他はない。
 当の黒子は瞳を輝かせ、カモミールティを美味しそうに飲んでいる。黒子は普段からあまり表情の変化が見られないのだが、美味しいものを口にしたときは別らしく、明らかに目の輝きが違うのだ。
 この反応を見る限り、紅茶は気に入ってもらえたようだった。
「ごちそうさまでした」
「ああ」
 飲み干したティーカップをソーサーに置いた黒子がじっと緑間を見つめる。
「美味しかったです。緑間君、紅茶を淹れるのが上手いんですね」
「別に、普通なのだよ。誰が淹れてもそんなに変わらない」
 実はしっかりキッチンタイマーを使って時間を調整したのだった。手間をかけたのを判って貰えるのが嬉しかった緑間だが、そんな事はおくびにも出さずポーカーフェイスを貫いた。
 ──単にバスケ以外のことで褒められるのが苦手というだけだったりするのだが。
「そうですか。でもボクの好みでした」
「……それは良かったのだよ」
 再び沈黙が訪れる。
 お茶があるうちはカップを手にしていればいいからまだ間を持たせることが出来るが、これでもうその手も使えない。
 このままではわけのわからないプレッシャーに押しつぶされてしまいそうだと思った緑間は、観念して自分から再度話題を振った。
「それより何か用があるのかと、さっきも聞いたのだが」
「わかりませんか」
「わかっている顔に見えるか」
「いえ。そりゃそうですよね」
 うんうんと何かを納得したように頷いた黒子が、部活の皆でよく帰りに寄る店と同じロゴが入った手持ちのビニール袋をごそごそと漁る。
 説明を一切省かれているので何がなんだかわからない緑間は、とりあえず黒子の挙動を見守る姿勢に入る。普段からバスケ以外で行動も考えも読めないので、何が起きるのか考えるのが無駄なのである。
 それにしてもA型のわりにマイペースな奴なのだよ、と緑間は袋を漁っている黒子を眺めてしみじみと思う。
 そんな黒子を好きになってしまったこと自体、緑間にとっては不可解だった。
 想いを自覚してからも、相性が悪い相手だからと、そもそも相手は同性なのだからと諦めていた。だからこうして部屋で二人きりというのは、大げさでもなく夢のような状況なのだ。
 自分にないものを持っているからこそこうまで惹かれるのだろうか──答えの見えない葛藤を続けている緑間に、黒子が袋の中身を取り出した。
 それは全長が手のひらほどの大きさの直方体をしていて、鮮やかな赤を基調としている。紙で出来たその箱をぺりぺりと開けると中には銀色の袋が入っていた。
「なんだそれは」
「ポッキーです」
 答えながら黒子が銀袋を開けてポッキーを一本取り出す。
「そんなことは見ればわかるだろう。それがなんなのだと聞いている」
「緑間君は頭良いのに、やっぱり時々バカですよね」
 黒子の発言を聞いた緑間は頬の肉をぴくぴくさせる──が、緑間はそれを十分に自覚しているので頷くに留めた。
 これが他の人間、例えば黄瀬や青峰あたりに言われたなら文句千倍にして返すところだ。
「そんなのは知っている。いいからさっさと結論を述べるのだよ」
 ふう、とわざとらしくため息を吐いた黒子が、ポッキーを緑間の眼前にかざした。
「緑間君、ボクのことは好きですか」
「……そうだと言ったろう」
「ボクも緑間君のことが好きです。そして、今日は十一月十一日です」
「だからなんなのだよ」
 怪訝そうに首を傾げた緑間の口に、黒子がポッキーを突っ込んだ。
 緑間の口内に甘いチョコレートの香りが漂う。
「ん?」
「何も言わずにそのまま咥えててください」
 いつの間にかテーブルの向かいからすぐ隣に移動していた黒子が、緑間の咥えているポッキーのもう一方の端をおもむろに咥えた。
 ここに至ってようやく黒子の意図が把握できた緑間は、まったく回りくどいと内心独白する。
 嬉しくないわけない。
 むしろこの状況は一般的に据え膳と呼ばれるものだろう。流石に勢い任せで情事に及ぶ気――というか勇気はないが、相手にここまでさせて躊躇するほど緑間は弱腰ではなかった。
 小さな口で少しずつ噛み進める黒子に、緑間は微かに口角を吊り上げる。
 黒子の言葉通り、何も言う気はない。
 ただ──。
「……っ」
 息を飲んだ黒子の目が見開かれ、驚きの色に染まる。
 ポッキーを食べ進めた緑間と黒子の距離が一気に縮まり、そのまま重なった。
 想像していた以上に柔らかい、と緑間は思う。黒子の前髪が鼻先をくすぐり、ほんのりチョコレートの香りが緑間の鼻腔を抜けていくのが判る。
 時間にして僅か数秒重なり合った唇が、どちらからともなくゆっくり離れていった。
「……で、だ」
「なんでしょう」
 未だ互いの息がかかるほどの至近距離にいる黒子をじっと見つめて、緑間は声が震えないよう意識しながら言葉を続ける。
「こんな回りくどい方法をとった理由は」
「やってみたかったんです。ポッキーの日って、カレンダーにあったものですから」
「……それだけか」
「それだけってこともないんですが」
「なら、なんなのだよ」
 照れ臭さも手伝って、ふいっと横を向いて黒子から視線を外してから、いつも以上に無愛想な口調で緑間は呟く。
 勢いに任せたが、これでもファーストキスだったのだ。今更になって猛烈にこそばゆい気恥ずかしさが襲ってくる。
「こっち向いてください」
「何をす」
 横を向いていた顔に黒子の両手が添えられたかと思うと強引に元の位置へ戻され、無理矢理正面を向かされた緑間は一言文句を言おうと口を開いたのだが――その途中で唇を塞がれてしまった。
 目を見開いた緑間の心臓が、どくんと大きく跳ねる。無意識に黒子の背中へと腕を回した緑間は、そのまま壊れ物を扱うように黒子の体を抱きしめた。
 気分が高揚しているせいか、知らず知らずのうちに腕が震える。
 今自分は好きな人を抱きしめて唇を重ねているのだという実感が、指先から唇から心へ伝達され、何故だか涙腺を刺激する。
 幸せというのはどんなものかと問われたら、今ならば答えられるかもしれない。
 不思議な感動で心が充足していた緑間だが、唇を離した黒子が緩慢な動きで自分を見上げたのを見て怪訝な表情を浮かべた。。
「驚かされた、お返しです」
「……そうか」
 幸せな気分から一転、想定外な黒子の発言にもう何と言っていいかまったく判らず、瞬きを繰り返すしか出来ない緑間に、黒子が「さっきの質問、お答えします」と悪戯っぽく微笑んだ。
「ファーストキスをするなら緑間君が良いと思ったので、ポッキーの日にかこつけてみただけです」
 そう言って自分の背中に回された黒子の腕の温かさを感じた緑間は感極まって、思わず抱きしめていた腕にぐっと力を入れる。一瞬黒子が苦しそうに吐息を漏らしたが、腕を緩める気にはなれなかった。
「俺も質問に答える」
「何ですか?」
 すうっと息を吸ってから、緑間は穏やかな口調で言葉にする。
「俺も、付き合いたいと思っているのだよ」
「あの。緑間君」
「なんだ」
「今更です」
 正論なので何も言えず、ぐ、と緑間は言葉に詰まる。
 そんな空気を感じ取ったのか、黒子がどこか楽しそうに囁いた。
「ボクはもうとっくに付き合ってるんだと思ってました」
 きゅっと今度は黒子の腕に力が入る。
 決まり悪げに軽く喉を鳴らした緑間は、次のイベント――さしあたってはクリスマスだろうか、そのときには恋人としての名誉を挽回すべく、しっかりと喜んで貰えるよう下準備をしようと心に誓った。
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