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日記 + 最新小説保管 / 創作・版権二次創作 / 同性愛要素、性表現含
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本当の声を聞かせて(チェイサー×アルケミスト)
突発で一人称のSSを書きたくなりまして。
(冬原稿が詰まったとも言う)
白羽の矢が当たったのはROのお話でした。


チェイサー×ケミ(ヴァン×寝衣)です。


……名前が殆ど出てこないことに今更気づきましたが
気にしない方向で。

時間軸的には
【人の恋路を邪魔するやつは。(チェイサー×アルケミスト) 】の
一寸ばかり前、と言ったところでしょうか。


それでは、続きを読むからお進みください

 対人関係に悩むって相談をよく受けるんだが、人の心ってのは、案外掴みやすいもんさ。
 まずはジャブ程度に言葉を投げて、反応を見てから次の一手を考える。そんな単純作業を何度か繰り返せば、話し相手の感情を、だいたいなら把握できるって寸法だ。
 無論、それが全てだって結論を出すのはタブー。あくまで、そいつの心の外側にある、がっちり閉じられた扉の入り口に立つ資格が出来たって、身の程わきまえないと失敗する。心を砕いた仲になりたいんなら、それなりの誠意って奴をもって紳士的にいかなきゃな。
 人の心 掴みたいなら 掴ませろ――字余り。
 天津に伝わる古典の一つ、俳句っぽくゴロを合わせた俺の持論だが、間違っちゃ居ないと思う。
 ――と、ここまで高説垂れといて何だが、そこまでの手順が面倒だから、俺自身はそうそう人間に深入りしない。
 冷淡? 人でなし? 結構結構、そう思ってくれなきゃ困る。
 ただの専属傭兵とはいえ、攻城戦なんてやってるおかげで、人間関係のしがらみはかなり面倒だし気を遣うんだ。チェイサーってのは隠密行動に長けてるぶん、常に立ち位置を把握してなきゃ一気に立場を悪くしたっておかしかない。
 プライベートでの厄介ごとで、これ以上神経を使いたくないって思うのは当然だろう? 
 逆に言えば、俺がそこまでの手順を踏むってのは、それなりに気に入ってなきゃしないってことだ。
 判ってんのかねえ、あの猫は。




「よう、猫」
「…………いらっしゃい」
「なんだ、つれないな。久々とはいえ、一応客だぜ俺」
 プロンテラ精錬所の入り口横、いつもの定位置でホムンクルスの羊を連れて、露店を出しているアルケミストが居る。俺のご贔屓さんてやつだ。
 名前は勿論知っている――寝衣だ。が、ついつい猫っつーあまりに単純で似合い過ぎる愛称をつけちまったんで、そのまま猫と呼んでる。綺麗な顔に気の強そうな瞳が俺の好みにストライク。惚れてるとまでは言わないが、かなり気があると言っていい。惜しむらくは男だってことだが、まあそこは些細なことなので気にしない。
「銘入りの白スリム八百。あと青を五十。あ、ついでにコーティング五十な」
「はいはい」
 事務的な愛想のなさはある程度いつものことなんだが、今日はなんとなく前までと違う。
 不調和を感じるのは気のせいじゃないはずだ。
 体調が悪いと素っ気なくなるタイプの人間もいるが、こいつはそういうことを客に感じさせる奴じゃないしな。髪の色艶も良い案配にさらっさら猫毛金髪だし、顔色が悪いってんでもない。
 なら、俺がなんかやらかしたと思うのが自然な流れだが――久々に顔を出した店に不義理だったってことくらいしか原因が思いつかない。
 無言で袋にポーション瓶を詰めている姿をじっと見つめながら俺は、ふと思い出して懐をまさぐった――ああ、あった。
「そうだ。ジャルゴン食うか、お前」
「めぇ……」
 心なしか首を振って拒絶する羊と俺を見比べた猫が、意味深に、だが純粋に何かがおかしかったらしく、うつむき加減で笑いをかみ殺す。
 普段のすました顔も綺麗だが、崩れた表情が年相応に見えた。本当のこいつが垣間見えた気がして気分が良い。
 っつーか、良い。この顔。結構、胸のど真ん中ストレートに入った。
 男ってのは単純なもんで、こんなもので好みの顔が見られるなら安いもんだと、もっとサービスしたくなる。
 生まれてこのかた性別・男な俺は、懐に入っていたジャルゴンをばらばらと地面に転がしてみた。
 ――あれ、食わない。羊の餌はジャルゴンで合ってたはずなんだがな。
「無駄だよ。この子、俺の手からしか食べないから」
「はー。よく懐いたもんだ」
「そうじゃなくてホムンクルスは主人と認めた人間からしかご飯を食べないんだよ。ほらヴェ、んんっ……お食べ」
 そう言いながらジャルゴン拾って改めて手のひらに乗せ、変な咳を鳴らしてから羊の口元へ運ぶと、先ほどとは打って変わってがつがつ食い始めた。
 主人を判ってる、か。こいつは感心するしかない。
「はー、成る程な」
「これくらい常識だと思ってたけど。攻城戦出てる癖に、そんなことも知らないの?」
「仲間にホム持ちのクリエもケミも何人かいるが、別にそいつらのホムに興味はないからな。俺が知ってるのは、バニルは製薬成功率に関係するってくらいだ」
「へえ。ギルド内で製薬してる人居るんだ」
 瞬間、ぴりっと空気が弾けた気がしたのは気のせいじゃあない。商売敵だから当然っちゃ当然だが、猫の若干声が低くなったのを感じた俺は、このまま話題を進めるか悩む。
 逡巡――会話、続行。答えはこの先だ。
「そりゃま、攻城戦ギルドだしな。俺みたいな傭兵はともかく、全部外部から買ってたら資産がいくらあっても足りないだろ」
「ふーん。俺のポーション、とっくに尽きてると思ったけど。ギルドに同業が居るなら心配ないね」
 ――ん?
 口調は淡々としているんだが、言葉の端々に感じる棘。
 まあなんだ、例えるならデビアスみたいに判りやすいんじゃなく、可愛い幼女が座ってるんだから大丈夫と思ってフェアリーフに触れてみたら実はあの木に見えない棘があって痛かった、ってな感じの。
 ……これは、ひょっとしなくても。
「なあ、猫」
「何」
 うわお、超低気圧。
 気分悪い気に入らないおかんむりって顔中に書いてある――んだが、俺の気分は最高。
 なんでかって?
 だって俺の所為なんだろ、その顔。
 これが上機嫌にならずになんとする。
 ――とはいえ、笑って言っちゃあ次の台詞は意味がない。
 緩む頬を引き締め、俺は至極真面目な顔で猫の瞳を真っ直ぐ見つめた。
「俺、お前以外の銘入りポーション使ってないぜ」
「……へえ。随分気に入られたもんだね」
「傭兵先の製薬担当にゃ悪いがな」
「その割には、随分音沙汰がなかったけど」
「あれ。俺思ったより信頼ない?」
「別に。単に、攻城戦の回数と消費量に対する購入数を考えたら本当なのかって思うだろ」
 俺がどんだけの数を買ってったか、把握してるわけか。
 客商売としては正しいし、他の客にもそうなのかもしれないが、ここはちょいと自惚れていたい。
 覚えてたのは、俺相手だからって。
「そりゃあ俺の腕が上がったから……と言いたいとこだが、腕も装備も良い献身が何人か入ってな。単に消費が減っただけってわけだ」
「成る程ね」
 説得力のある理由に納得したらしい。
 ま、事実なんだが。腕の良い献身が入るだけで消費量はぐぐっと下がる。特に俺が担当してるのは脱衣だから必然的に相手の懐へ飛び込んでいく。献身のあるなしは大きく変わってくるポジションだ。近いうちに三次職へ転職可能になるって話だし、そうしたらまた事情は変わるかもしれないが、そこんとこは蛇足だな。
「……はい、品物。確認したら代金出してよ」
 仏頂面でぐっと目の前に差し出されたポーションの入った袋を受け取った俺は、首をひねる。
 あっれ、失敗したか? いや、間違いなく雰囲気は柔らかくなったし誤解も解けたんだから、上手くいった――そう、扉の前に立てた筈なんだが。
 未だ何か足りなかったかと袋を覗いてポーションを数えていた俺は、珍しく猫のミスを発見した。三度ほど数えたが、どう考えても白スリムの束が一つ多い。
「なあ猫。間違ってるぜ、数」
「合ってるよ」
「これじゃスリム多いって。見てみろよ」
「……だから合ってるって言ってるじゃない」
 落ち着かない瞳を見て、ようやく察した俺は内心舌打ちをした。
 これはミスだ――俺の。
「――ああ、合ってた。悪い、俺の見間違いだ」
 言って俺は猫の手に多めの代金を握らせる。
 顔を上げた忌々しげな表情に、親しさを感じるのはやっぱり俺の自惚れか?
 だが、基本商売人としての枠を外さない、露店商としては優等生のこいつが俺に見せる態度はただの客へのものとは違うって――思いたくなるじゃないか、こんな顔見てたら。
 満足した俺はうーんと背を伸ばしてから軽く片手をあげた。
「じゃあな、猫。また来る」
「使いすぎてさっさと買いにおいでよ。作っとくから」
「俺の財布が破産しない程度にはじゃんじゃん使わせて貰うさ」
 憎まれ口が心地良い。
 猫の店をあとにした俺は、これはハマっちまったかもなと心のどこかに居る冷静な自分が己を分析するのを感じつつ、拠点にしているいつもの宿へと足を向けた。
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