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日記 + 最新小説保管 / 創作・版権二次創作 / 同性愛要素、性表現含
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48時間精神修行の旅 (緑黒 帝光時代)
黒子のバスケSS。緑黒、帝光時代のお話です。

つい先日、温泉旅行に行ってきた相方から
浴衣姿の緑間さんとか湯上がりの黒子っちとか
そんな話をついったーで聞いてしまい滾った結果だったり。


そんなわけで、続きを読むからお進みください。

「え。行かないんですか、露天風呂」
 部屋の隅で荷物を整理している黒子が、事も無げにそう言ってくる。部屋に備え付けられた浴衣と帯が傍にある時点で、行く気満々なのがうかがえる。
 自覚があるのかないのか、恐らく後者なのだろう――天然というのは、まったくもってタチが悪いと緑間は内心毒づいた。
 そんな相手に惚れてしまったのが運の尽きというものなのだろうか。
「……いいのか」
「いいのかって、ダメなんて言うわけないじゃないですか。ここの温泉、今回の旅行の目玉ですよ。入らなきゃ、損です」
 淡々と語りつつ頷く黒子に、心から「そうじゃない」とツッコミを入れたい思いをぐっと堪えた緑間は、肩を落としてため息を吐いた。
 そもそも、この旅行は偶然の産物で来ることになった。
 二人で買い物に出かけた先がたまたまリニューアルオープンセールだとかで福引きをやっていて。今回の買い物がバッシュだった為、余裕で何度か回せる位の福引き券を貰えて。折角だからやってみようかと交代で回してみたら、黒子が回したときにペアの旅行券が当たったのだ。
 かんらかんらと鐘が鳴る中受け取った券に書かれていたのは、電車一本で行ける郊外ではそこそこ名の知れた温泉地の旅館名だった。お互い譲り合って一時間。もうどうせなら二人で行きましょうと言ったのが黒子だった。
 最初、部活で行けないだろう・中学生二人で行くのは流石に等と躊躇っていた緑間だったが、結局は黒子の「引き当てたボクに同行者を選ぶ権利があるんでは?」という一言に折れた。
 ――そして今に至る。
 仏頂面を浮かべている緑間だが、好きな相手と一緒に旅行に来られて嬉しくないわけない。だが二人っきりの旅行で温泉宿、とどめに泊まりがけと、つきあい始めたばかりのカップルにとってなかなかハードルの高いキーワードである。
 当の黒子は全く意識していないようだが、緑間が旅行を躊躇っていた一番の理由はそこにあるのだと言うことを全く判っていないらしい。バッシュを買いに行くのだって、これはやはりデートになるんだろうかと、当日の朝、おは朝の占い結果が良いようにと緑間が祈る気持ちで見ていたのを知りもしないだろう。
 ここに来るまでの電車内だって、隣の席に座る私服の黒子に狼狽していたなど、緑間が飲みかけたペットボトルを「ください」と言われたときの動揺など、到底想像もしていないのだ、きっと。
 もうどうなっても知らんし責任は持たない、と半ば投げやりに緑間は頷いた。
「行くぞ」
「じゃ行きましょう」
 部屋にあった旅館案内によると、浴場はアメニティが揃っているので、特にタオルや石鹸は持っていかなくても良いらしい。
 自分はLサイズ、黒子はMサイズの浴衣を抱えて部屋を出る。
「鍵持ちました?」
「ああ」
 部屋に鍵をかけ、緑間は黒子と連れだって浴場へと向かう。
 古さと伝統を感じる旅館の廊下は人の姿が見えず、それもそのはず、ここは全館で五部屋しか客室がない。その分、ゆったりと静かに過ごせるのが売りなのだ。はっきりいって、中学生だけで来られるようなレベルの旅館ではない。
 にしても、と緑間は隣を歩く黒子を見下ろす。
 自分よりも頭一つ背の低い黒子の、綺麗に整ったつむじが見える。表情が乏しいのは相変わらずなのだが、自分と一緒に風呂へ入ることへの緊張は一切見えない。
 一応自分たちは付き合っている恋人同士であって
 浴場の前に付くと、大浴場とは別に家族風呂が隣接されていた。
 扉の前にぶら下がった『貸し切り中』の札を見上げ、黒子が指さす。 
「失敗しましたね。貸し切り風呂は今使用中らしいです」
「……別に、大浴場でいいだろう」
「ですね。でも折角あるなら両方入りたいじゃないですか。泉質も違うみたいですし」
「黒子。お前、実は温泉好きなのか」
「はい。緑間君は違うんですか?」
「別に嫌いではないのだよ」
「さっき入るのを渋っていたようだったので、あまり好きじゃないのかと思ってました」
「温泉が嫌いなら、そもそも旅行に来ることを承知しない」
「それもそうですが、ちょっと強引に連れてきたかなと思ってたので」
 がらりと木枠の扉を開けると簡素な脱衣所があった。扇風機に体重計、棚には木の籠とお約束のアイテムが並ぶ。
「誰も入ってないみたいですね、こっち」
「の、ようだな」
 さくさくと奥に進んで籠の中に浴衣を入れた黒子は躊躇なく服を脱ぎ始めた。
 う、とたじろいだ緑間は無意識に喉を鳴らしてしまう。部室は勿論、合宿やプールなどで肌など見慣れていると理性が訴えても、シチュエーションがそれを許さない。
 同性相手に目のやり場に困るというのもおかしな話なのだが、否応にも白い素肌へ視線が吸い寄せられる。自分より小柄ではあるが、そこそこ平均並みには均整の取れた体格。ただやはり帝光レギュラーという猛者だらけの中では、飛び抜けて華奢に見えてしまう。
「緑間君?」
「……ああ。いや、何でもない」
 とんだ精神修行だとため息を吐いた緑間は、観念して浴衣を籠に置いた。
 
 
 
「いいお湯ですねえ」
「……そうだな」
 脱衣所に誰の荷物もなかったので判っていたことなのだが、予想通り大浴場には先客は誰もおらず、広い露天風呂を自分達だけで占有していた。
 とはいえ、柵の向こうに家族風呂がある以上、そこには人が居るのだろう。
 石堤で囲われた風情ある温泉に二人並んで浸かっているこの状況。マナー違反なので、当然だが湯船にタオルを持ち込んで居ない。
 視線を湯の中へ向けないよう精神を律しながら、緑間は息を吐く。
 ――温泉に入るというのは、こんなに疲れるものだっただろうか。
「練習の疲れが吹っ飛ぶ気分です」
 隣の黒子はうーんと足を伸ばしてすっかりリラックスしている様子だ。それはそれで心から楽しんでいると言えるし、自分を恋人として意識していないとも言えた。
  ここまできても尚、緊張の欠片もない風を見ていると、自分ばかりがあれこれ考えて空回りしているような、自分だけが黒子への想いが深くなっているだけな気がしてきて、緑間は唇を軽く噛む。
「どうしたんですか」
「別に。何でもないのだよ」
「嘘はやめませんか」
 上気してほんのり紅く染まった肌の黒子に見つめられ、緑間は心の中で平常心、と念じてから口を開いた。
「お前と初めての一泊旅行、しかも温泉ときている。意識も緊張もするなと言うのが無理な話なのだよ」
「緑間君が、緊張ですか」
 黒子の心底意外という顔が、頭上の月明かりと共に揺れる水面へぼんやり映る。
「見えないかもしれませんが、ボクもこれで結構どきどきしてます」
「そうは見えないのだよ」
「緑間君には信じて貰いたいです。どうしたら信じて貰えますか」
「俺に聞かれても困る」
 そうですね、と眼下の黒子が一寸ばかり考えて、理由らしき物を思いつくたびに指を折っていく。
「一緒に一泊旅行しているのが嬉しくて、先導をしてくれる緑間君が頼もしくて、温泉で眼鏡を外した緑間君が格好良くて」
「……それで」
「全部、緑間君が好きだからです。だから、とてもどきどきします」
 そう言った黒子にいきなり手を掴まれ――導かれるまま、自分の手が黒子の胸元に添えられる。
「ほら、今もこんなに」
 恥ずかしげに俯いた黒子から、掌を通して鼓動が鳴っているのが伝わってくる。
 不意打ちな告白と挙動の二段攻撃に、緑間はくらっと目眩を起こした。自身を抑えていた理性という名の堤が崩れていく音が聞こえた気がした。
 潤んだ黒子の瞳が自分を真っ直ぐに見つめる。
「黒子。俺も――」
 言いながら黒子の顎を持ち上げ、唇を近づけた――そのとき。
「んっ……ああっ」
 柵の向こう、家族風呂から、妙齢の女性と思われる、得も言われぬ艶めいた声音が聞こえてきた。 
 思わず動きを止め、互いに瞬きを繰り返してしまう。
「……今のって」
「……だろうな」
 声音の意味が分からない程度の知識は持っている中学三年男子の二人は、なんとなく気まずげに頷き合った。
 一声では収まらず、必死に押し殺そうとしている切なげな声が断続的に聞こえてくる。
「……出るか」
「……そうですね」
 そのまま湯船から上がり、脱衣所で浴衣に着替える。
 温泉は確かに気持ちよかったのだが、折角黒子から本心を聞けて行動を起こせたところに、余計な横やりを入れられてしまった。
 流石にもうこの旅行中に同じ勢いは出せないだろうと半ば諦めていた緑間の後ろで黒子が小さく囁いた。
「続きは後で聞かせてください」
 狼狽して振り返った緑間の瞳に映ったのは、上機嫌な黒子の微笑みだった。
「ああ、後で――その気になったら」
「なってくれないと困ります。あ、さっきと同じことしたらその気になってくれますか」
 ――俺は一生こいつに敵わないかもしれない。
 苦笑した緑間だったが、その胸の中はたまらなく幸せな想いで充足していた。
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