日記 + 最新小説保管 / 創作・版権二次創作 / 同性愛要素、性表現含
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本当の声を聞かせて(チェイサー×アルケミスト)
突発で一人称のSSを書きたくなりまして。
(冬原稿が詰まったとも言う)
白羽の矢が当たったのはROのお話でした。
チェイサー×ケミ(ヴァン×寝衣)です。
……名前が殆ど出てこないことに今更気づきましたが
気にしない方向で。
時間軸的には
【人の恋路を邪魔するやつは。(チェイサー×アルケミスト) 】の
一寸ばかり前、と言ったところでしょうか。
それでは、続きを読むからお進みください
(冬原稿が詰まったとも言う)
白羽の矢が当たったのはROのお話でした。
チェイサー×ケミ(ヴァン×寝衣)です。
……名前が殆ど出てこないことに今更気づきましたが
気にしない方向で。
時間軸的には
【人の恋路を邪魔するやつは。(チェイサー×アルケミスト) 】の
一寸ばかり前、と言ったところでしょうか。
それでは、続きを読むからお進みください
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一日遅れのポッキーの日。
誕生日。(クルセイダー)
大切な相手の誕生日が近いと、毎日が楽しい。当日までにする準備はいくら時間があっても足りないくらいだ。
部屋の装飾、当日は何をして喜んでもらおうか、プレゼントは何が良いか、料理はどうしようか、ケーキの種類はどうしようか。
そうだ、前に作った龍の城地方の料理が気にいっていたから、今回はそれで統一しようか。甘党な俺と違い、相手は甘過ぎるものは苦手だから、作るとしたら上品な甘さに仕上げねば。プレゼントと言っても、相手は大抵の物は持っているからな、これが一番の難関だ。ロードナイトの鎧に合う趣味のいい武器をあつらえるか。武器と一口に言っても装飾として飾る用向きの物か実践で役に立つ質実剛健な物か、これまた選ぶのが難しい。
そんなことを延々と考える時間がことのほか幸せで、早く来い来いと心待ちにしているが、この楽しみがずっと続けばいいとも思う。
皆でパーティしてもいいが、二人きりの時間も欲しい。毎年のことなのだが、その矛盾した心を楽しむのもまたおつなものなのだ。
「……むう。悩ましい」
やはり前日の夜から当日は二人きりで、当日の夜に皆を招待してパーティにするのがいいだろうか。
柔らかで上質なソファに腰掛け、俺は料理本をぱらりとめくる。
午後の陽射しは暖かく部屋に差し込み、テーブルには湯気が立ち昇る紅茶が喉を潤し舌を楽しませてくれる。この紅茶は先日プロンテラの知る人ぞ知るお店で買ってきたものだ。
お気に入りのティーセットは宮廷調理人オレルアン推薦の名器で、美味しい紅茶を更に引き立ててくれる。クルセイダーギルドの上司がツテを頼りに入手してくれたものだ。
テーブルクロスは知り合いのプリーストが編んでくれた真っ白なレース製。雨上がりの水滴を思わせるような繊細な網目で、あまりの出来に買い取らせてくれといったのだが、向こうは俺の為に作ったのだと頑として譲らず、結局進呈されてしまった。使わないのも勿体無いし、さりとて汚したくも無いので、特別な気分のときに出している。
自分なりに調えた、大事な大事な人間のことを考えるのに相応しい時間だ。
「にゃあああああああああああ!」
「……」
「にゃうにゃう」
……折角、最上の穏やかさを演出していたというのに、台無しだ。
にゃあにゃあ煩いから、一瞬豹のやつが訪ねてきたのかと思ってしまったぞ。
勿論、この穏やかな空気へ唐突に割り込んできた黒い影は、懇意にしている露店商でにゃーというのが口癖なブラックスミスの豹ではなく、本物の黒猫だ。そういえば空気を入れ替えようと二階の窓を開け放したままだった。
見覚えのある黒猫は、最近このあたりを徘徊している野良で、その割りには毛並みも色艶も良く、よく人に懐いている。近所の家を順々に回ってごはんを貰っているのだろうか。まあ、これだけ愛想の良い美猫ならば、ついつい一宿一飯の世話をしても仕方ない。
腹が減っているのだろうか、妙に甘えた仕草で擦り寄ってくる。服の上から足を甘噛みしてきたり、膝の上に登ってきて存在を主張したり、俺が見ている料理本を爪とぎよろしくカリカリしたり。
いいか、お前。俺は今、大事な大事な人の為に、とても大事な案件を抱えているのだ。その為の下準備を楽しむという、至福の時間を過ごしていたんだぞ。
それを我が物顔で今も現在進行形で邪魔して。
この甘ったれめ。
この──
「みゃう?」
無防備に見つめてくる、まるで寒天のようにぷるるんとした瞳に負けた俺は、膝から黒猫と料理本をソファに降ろしてから立ち上がる。
「みゃあ」
「判った判った。今ミルクを入れてやるからな」
「みゃ!」
やれやれと思うが仕方がない。それに成猫の癖にこんな可愛らしい鳴き声で甘えられては、料理本に集中できん。あくまでその為にミルクを入れてやるのだからな。忘れるな?
「みゃうー」
……判っておらんな、これは。
まあいい。器量良しな黒猫が傍らに居るというのも、最上の穏やかさを演出するのにプラスの要素かもしれないな。
薄型の皿にミルクを注ぎ、ソファの傍に置くと黒猫は嬉しそうに一啼きしてから食し始める。
「床に零したらダメなのだからな。お行儀良く飲むのだぞ」
「にゃあ」
うむ、良い返事だ。
黒猫の丸い背中を視界の端に入れつつ、俺はなんだか先程よりも和んだ気持ちで再び料理本を開き、少しだけ冷めてしまったが相変わらず美味しい紅茶に口をつけた。
部屋の装飾、当日は何をして喜んでもらおうか、プレゼントは何が良いか、料理はどうしようか、ケーキの種類はどうしようか。
そうだ、前に作った龍の城地方の料理が気にいっていたから、今回はそれで統一しようか。甘党な俺と違い、相手は甘過ぎるものは苦手だから、作るとしたら上品な甘さに仕上げねば。プレゼントと言っても、相手は大抵の物は持っているからな、これが一番の難関だ。ロードナイトの鎧に合う趣味のいい武器をあつらえるか。武器と一口に言っても装飾として飾る用向きの物か実践で役に立つ質実剛健な物か、これまた選ぶのが難しい。
そんなことを延々と考える時間がことのほか幸せで、早く来い来いと心待ちにしているが、この楽しみがずっと続けばいいとも思う。
皆でパーティしてもいいが、二人きりの時間も欲しい。毎年のことなのだが、その矛盾した心を楽しむのもまたおつなものなのだ。
「……むう。悩ましい」
やはり前日の夜から当日は二人きりで、当日の夜に皆を招待してパーティにするのがいいだろうか。
柔らかで上質なソファに腰掛け、俺は料理本をぱらりとめくる。
午後の陽射しは暖かく部屋に差し込み、テーブルには湯気が立ち昇る紅茶が喉を潤し舌を楽しませてくれる。この紅茶は先日プロンテラの知る人ぞ知るお店で買ってきたものだ。
お気に入りのティーセットは宮廷調理人オレルアン推薦の名器で、美味しい紅茶を更に引き立ててくれる。クルセイダーギルドの上司がツテを頼りに入手してくれたものだ。
テーブルクロスは知り合いのプリーストが編んでくれた真っ白なレース製。雨上がりの水滴を思わせるような繊細な網目で、あまりの出来に買い取らせてくれといったのだが、向こうは俺の為に作ったのだと頑として譲らず、結局進呈されてしまった。使わないのも勿体無いし、さりとて汚したくも無いので、特別な気分のときに出している。
自分なりに調えた、大事な大事な人間のことを考えるのに相応しい時間だ。
「にゃあああああああああああ!」
「……」
「にゃうにゃう」
……折角、最上の穏やかさを演出していたというのに、台無しだ。
にゃあにゃあ煩いから、一瞬豹のやつが訪ねてきたのかと思ってしまったぞ。
勿論、この穏やかな空気へ唐突に割り込んできた黒い影は、懇意にしている露店商でにゃーというのが口癖なブラックスミスの豹ではなく、本物の黒猫だ。そういえば空気を入れ替えようと二階の窓を開け放したままだった。
見覚えのある黒猫は、最近このあたりを徘徊している野良で、その割りには毛並みも色艶も良く、よく人に懐いている。近所の家を順々に回ってごはんを貰っているのだろうか。まあ、これだけ愛想の良い美猫ならば、ついつい一宿一飯の世話をしても仕方ない。
腹が減っているのだろうか、妙に甘えた仕草で擦り寄ってくる。服の上から足を甘噛みしてきたり、膝の上に登ってきて存在を主張したり、俺が見ている料理本を爪とぎよろしくカリカリしたり。
いいか、お前。俺は今、大事な大事な人の為に、とても大事な案件を抱えているのだ。その為の下準備を楽しむという、至福の時間を過ごしていたんだぞ。
それを我が物顔で今も現在進行形で邪魔して。
この甘ったれめ。
この──
「みゃう?」
無防備に見つめてくる、まるで寒天のようにぷるるんとした瞳に負けた俺は、膝から黒猫と料理本をソファに降ろしてから立ち上がる。
「みゃあ」
「判った判った。今ミルクを入れてやるからな」
「みゃ!」
やれやれと思うが仕方がない。それに成猫の癖にこんな可愛らしい鳴き声で甘えられては、料理本に集中できん。あくまでその為にミルクを入れてやるのだからな。忘れるな?
「みゃうー」
……判っておらんな、これは。
まあいい。器量良しな黒猫が傍らに居るというのも、最上の穏やかさを演出するのにプラスの要素かもしれないな。
薄型の皿にミルクを注ぎ、ソファの傍に置くと黒猫は嬉しそうに一啼きしてから食し始める。
「床に零したらダメなのだからな。お行儀良く飲むのだぞ」
「にゃあ」
うむ、良い返事だ。
黒猫の丸い背中を視界の端に入れつつ、俺はなんだか先程よりも和んだ気持ちで再び料理本を開き、少しだけ冷めてしまったが相変わらず美味しい紅茶に口をつけた。
こんなはずじゃあ。(♀メカニック)
ついったー診断でこんな結果↓が出てしまったので頑張ってみました。
cross_troubleさんの今日描くべきキャラは『ダル目で小柄で謙虚そうな20代に見えるオネェ系のロボット。職業:帝王』です。 http://t.co/ROswz6l
とりあえず無茶振り過ぎる。もっともあえて無茶振りの結果が出るのが楽しい診断なのですがw で、まあなんというか自分は絵描きではないのでSSで勘弁していただく方向で。何で書こうか悩んだのですが、無難(?)にROに致しました。最初黒バスにしようとしたけど20代という部分がネックで断念したのは内緒です。
というわけで本文は降りたたみ先に。
自分はメカニックを持っておりませんので、スキル仕様等間違って解釈していたら申し訳ありません……脳内鯖ということでひとつ宜しくお願いいたします。
cross_troubleさんの今日描くべきキャラは『ダル目で小柄で謙虚そうな20代に見えるオネェ系のロボット。職業:帝王』です。 http://t.co/ROswz6l
とりあえず無茶振り過ぎる。もっともあえて無茶振りの結果が出るのが楽しい診断なのですがw で、まあなんというか自分は絵描きではないのでSSで勘弁していただく方向で。何で書こうか悩んだのですが、無難(?)にROに致しました。最初黒バスにしようとしたけど20代という部分がネックで断念したのは内緒です。
というわけで本文は降りたたみ先に。
自分はメカニックを持っておりませんので、スキル仕様等間違って解釈していたら申し訳ありません……脳内鯖ということでひとつ宜しくお願いいたします。
ただ、ちょっとだけ。(ラウレル&イレンド)
別に、たいしたことじゃない。
ただ「それ」を見つけたときに、ちょっと。
そうさ、ほんのちょっとだけだ。
腕力にそんな自信のない俺にも持てるかどうか試してみたくなっただけだ。
俺が使えない武器だなんてのは判りきってたけど、あえて持ってみたかった。
よく知らない武器を研究するのだって、侵入者対策の一環て奴さ。
──なんてな。
そんなん嘘だって判ってるっての、自分で。だからそんな目で見んなよイレンド。目は口ほどにものを言うんだぜ。
ああ、お前の思っている通りだよ、くそっ。
だってあの人があんまりにも軽々と扱っているのを見ていたから。その鮮やかさが目に焼きついて離れないから、俺も持ってみたくなって。
それに新しいカタールが増えたら、そいつを俺があげたらあの人は喜ぶのかなって、そう思った。
悪いか。
魔術師の割には日々肉体鍛錬を怠ることなく、そこそこの戦闘力を持つ相手なら体術で渡り合える程度には鍛えているつもりなのだがと、自室で一人ラウレルは苦笑を口の端に浮かべた。
彼の両手で抱えてなお、カタールはずっしりと重い。ベッドに座っているから、実際に立って装着したとき感じる重量は余裕でこの倍以上なのだろう。
「これを、こうやってはめて……ってやっぱ俺には無理」
装備が可能ではない職であっても、それは一般の話で。規格外の体を持つ自分ならば装備できるのではと思ったのだが、やはり無理があるらしい。
扱うとまではいかなくとも、装着してみたかっただけなのだが。
軽やかに風を翔るあの腕は一見華奢に見えるが、その実極限まで余計な肉をそぎ落としたうえで俊敏さも失わない、絶妙なバランスで体作られているのだろう。
想い人の姿を脳裏に想い描いたラウレルは、まるでこの世が終わりそうな勢いの大きなため息を吐いた。
数日前に侵入者が落としていったカタール。ちょっと持ってみたいだとか、侵入者対策に研究してみたいだとかもっともらしい御託を並べて、ラウレルはそれを自室へと持ち帰ることに成功した。
他の皆はラウレルの言を信じただろう──ただ一人、こちらに向けてどこか物言いたげな視線を寄越していたイレンドを除いて。
直接口に出したことはないし、相談したこともない。だがイレンドは確実に知っている。三階に住まう暗殺者エレメス=ガイルに対し、叶う望みの薄い恋心を抱いていることを。
望みが薄いのは、エレメスの心には既に自分以外の誰かが住んでいるからだ。
それはあくまでラウレルの推測、勘でしかない。確たる証拠もなければ、本人に聞いたところでおそらく否定するだろう。
だが。
悔しくてはらわたが煮えくり返る思いだけれど、ずっとエレメスを見つめてきたラウレルだからこそ判る。
判りたくもないのに、気づいてしまったのだ。
からかわれているのに対して怒って困っているはずなのに、本気で嫌がっていない声。表情。周囲に助けを求めていながらも、真剣に逃げていない。拒絶していない。
そしてあれは仲間として仕方なく行動を容赦し容認しているのではない。エレメス個人として受け入れているのだと。
もしも明日からそれらの一切がなくなったらきっとエレメスは──寂しいと思うに違いない。
それを思うと大きいため息の一つくらい出ても仕方ないだろうと独り言をこぼす。
「何が仕方ないって?」
「げ」
「ご挨拶だね、ラウレル。何度ドアをノックしても返事はないし、部屋にいるのは確かなはずだしで無遠慮かと心の中で謝罪しながら入ってみれば、いくらなんでも開口一番人の顔見て「げ」はないんじゃない?」
「……悪かったよ」
自身の想像世界に深く入り込んでいたのか、どうやらドアが開く音も気配も気づかなかったらしい。
明らかに呆れ果てた表情で佇むイレンドの格好はいつでも侵入者と戦うことのできる武装だった。そういえばそろそろ巡回の時間かと今になって気づく。確か今日は男女で分かれていくと決めたのではなかったか。
ラウレルが気まずそうな顔をしたことでイレンドも気づいたのだろう、表情にいつもの柔らかさが戻る。
「すぐ支度する」
「早めにね。もうすぐセニア達が戻ってくるから。カヴァクもとっくに準備済みだよ」
へいへい、とラウレルは立ち上がってチェストを開け、綺麗に並んだ中から気に入りの杖を一本取り出す。
「なあイレンド、今日の巡回ルートだけど前と同じにするか? カヴァクが前言ってたろ、土管側がやばいって。俺もそれは」
ローブの襟を正しながら振り返ったラウレルは、イレンドの視線がベッドへと釘付けになっているのに気づき、話している途中で言葉を失う。
そこには、後で片付けようと思っていた一振りのカタールが鈍い銀の光りを放っていた。
「ラウレル、これって」
「……そいつの研究してた。つい没頭してて返事が遅れた。悪い」
「研究、ね」
全てを了解したようにイレンドはカタールの横に腰掛けた。
お互い隠喩を含んだ会話をしているのが滑稽に思う。イレンドならば余計なことを口外しないだろうし、いっそ胸の内を包み隠さず打ち明けてしまえばいいのだが、何度もあったはずの機会をすべてスルーしてきてしまっている為、本当に今更なのだ。
なのでつい、お互い判っているけど知らないふりという茶番を、他人の目がない場所でも演じてしまう。
「さっさと三階に行っておいでよ」
「……煩いんだよ、このお節介」
「お褒めに預かり光栄だね」
「褒めてねえ」
「褒めてるよ」
「何でだよ」
大抵の場合イレンドの言いたいことが判るラウレルだったが、今日に限っては本当に理解ができない。
にこにこ笑顔を崩さないイレンドを軽く睨み付けてから、ラウレルは隣に腰掛ける。
「さあ。何でだろうね」
「お前なあ」
「いいからさっさと行っておいで。巡回の途中で抜け出してもいいから」
「優等生の台詞じゃないな」
「今日は侵入者は来ないよ。そんな気がするんだ」
ただの勘だろうと悪態をつくラウレルを無視して、「それに」とイレンドが続ける。
「使ってあげなきゃ。いつまでもここにいたらカタールも可哀想だから。ね?」
そう言って微笑んだイレンドがラウレルの背中を軽く二度叩く。
ラウレルが三階へ行く目的を判っていながら、あえて使われないままの武器への感傷に置き換えたイレンドに感謝しつつ、ラウレルはゆっくりと頷いた。
「……そうだな」
元来性急な気性をしているラウレルは、一度腹を決めた以上、速やかにこれを三階へ持って行きたいと心がはやる。
強力なライバルの前であの人が自分だけに笑顔を見せてくれたりしたなら、天にも昇る気持ちで幸せな想いでいっぱいになれる。そんなことはないかもしれないが、その想像はラウレルを十分に幸せにした。
ただ、何故か──。
「ん?」
こちらに微笑みかけるイレンドを見たラウレルは、何故だか今すぐ三階へ行く気になれなかった。
隣に腰掛けているイレンドに少しだけ寄りかかり、自分と々くらい細い肩へ頭を乗せる。
「……ラウレル?」
「ちょっとだけしたら、行く」
「カヴァクを待たせてるよ?」
少し困ったようなその言葉とは裏腹に、イレンドから拒絶は伝わってこない。
何故──その答えがわからないまま、ラウレルは無言で瞳を閉じた。
ただ「それ」を見つけたときに、ちょっと。
そうさ、ほんのちょっとだけだ。
腕力にそんな自信のない俺にも持てるかどうか試してみたくなっただけだ。
俺が使えない武器だなんてのは判りきってたけど、あえて持ってみたかった。
よく知らない武器を研究するのだって、侵入者対策の一環て奴さ。
──なんてな。
そんなん嘘だって判ってるっての、自分で。だからそんな目で見んなよイレンド。目は口ほどにものを言うんだぜ。
ああ、お前の思っている通りだよ、くそっ。
だってあの人があんまりにも軽々と扱っているのを見ていたから。その鮮やかさが目に焼きついて離れないから、俺も持ってみたくなって。
それに新しいカタールが増えたら、そいつを俺があげたらあの人は喜ぶのかなって、そう思った。
悪いか。
魔術師の割には日々肉体鍛錬を怠ることなく、そこそこの戦闘力を持つ相手なら体術で渡り合える程度には鍛えているつもりなのだがと、自室で一人ラウレルは苦笑を口の端に浮かべた。
彼の両手で抱えてなお、カタールはずっしりと重い。ベッドに座っているから、実際に立って装着したとき感じる重量は余裕でこの倍以上なのだろう。
「これを、こうやってはめて……ってやっぱ俺には無理」
装備が可能ではない職であっても、それは一般の話で。規格外の体を持つ自分ならば装備できるのではと思ったのだが、やはり無理があるらしい。
扱うとまではいかなくとも、装着してみたかっただけなのだが。
軽やかに風を翔るあの腕は一見華奢に見えるが、その実極限まで余計な肉をそぎ落としたうえで俊敏さも失わない、絶妙なバランスで体作られているのだろう。
想い人の姿を脳裏に想い描いたラウレルは、まるでこの世が終わりそうな勢いの大きなため息を吐いた。
数日前に侵入者が落としていったカタール。ちょっと持ってみたいだとか、侵入者対策に研究してみたいだとかもっともらしい御託を並べて、ラウレルはそれを自室へと持ち帰ることに成功した。
他の皆はラウレルの言を信じただろう──ただ一人、こちらに向けてどこか物言いたげな視線を寄越していたイレンドを除いて。
直接口に出したことはないし、相談したこともない。だがイレンドは確実に知っている。三階に住まう暗殺者エレメス=ガイルに対し、叶う望みの薄い恋心を抱いていることを。
望みが薄いのは、エレメスの心には既に自分以外の誰かが住んでいるからだ。
それはあくまでラウレルの推測、勘でしかない。確たる証拠もなければ、本人に聞いたところでおそらく否定するだろう。
だが。
悔しくてはらわたが煮えくり返る思いだけれど、ずっとエレメスを見つめてきたラウレルだからこそ判る。
判りたくもないのに、気づいてしまったのだ。
からかわれているのに対して怒って困っているはずなのに、本気で嫌がっていない声。表情。周囲に助けを求めていながらも、真剣に逃げていない。拒絶していない。
そしてあれは仲間として仕方なく行動を容赦し容認しているのではない。エレメス個人として受け入れているのだと。
もしも明日からそれらの一切がなくなったらきっとエレメスは──寂しいと思うに違いない。
それを思うと大きいため息の一つくらい出ても仕方ないだろうと独り言をこぼす。
「何が仕方ないって?」
「げ」
「ご挨拶だね、ラウレル。何度ドアをノックしても返事はないし、部屋にいるのは確かなはずだしで無遠慮かと心の中で謝罪しながら入ってみれば、いくらなんでも開口一番人の顔見て「げ」はないんじゃない?」
「……悪かったよ」
自身の想像世界に深く入り込んでいたのか、どうやらドアが開く音も気配も気づかなかったらしい。
明らかに呆れ果てた表情で佇むイレンドの格好はいつでも侵入者と戦うことのできる武装だった。そういえばそろそろ巡回の時間かと今になって気づく。確か今日は男女で分かれていくと決めたのではなかったか。
ラウレルが気まずそうな顔をしたことでイレンドも気づいたのだろう、表情にいつもの柔らかさが戻る。
「すぐ支度する」
「早めにね。もうすぐセニア達が戻ってくるから。カヴァクもとっくに準備済みだよ」
へいへい、とラウレルは立ち上がってチェストを開け、綺麗に並んだ中から気に入りの杖を一本取り出す。
「なあイレンド、今日の巡回ルートだけど前と同じにするか? カヴァクが前言ってたろ、土管側がやばいって。俺もそれは」
ローブの襟を正しながら振り返ったラウレルは、イレンドの視線がベッドへと釘付けになっているのに気づき、話している途中で言葉を失う。
そこには、後で片付けようと思っていた一振りのカタールが鈍い銀の光りを放っていた。
「ラウレル、これって」
「……そいつの研究してた。つい没頭してて返事が遅れた。悪い」
「研究、ね」
全てを了解したようにイレンドはカタールの横に腰掛けた。
お互い隠喩を含んだ会話をしているのが滑稽に思う。イレンドならば余計なことを口外しないだろうし、いっそ胸の内を包み隠さず打ち明けてしまえばいいのだが、何度もあったはずの機会をすべてスルーしてきてしまっている為、本当に今更なのだ。
なのでつい、お互い判っているけど知らないふりという茶番を、他人の目がない場所でも演じてしまう。
「さっさと三階に行っておいでよ」
「……煩いんだよ、このお節介」
「お褒めに預かり光栄だね」
「褒めてねえ」
「褒めてるよ」
「何でだよ」
大抵の場合イレンドの言いたいことが判るラウレルだったが、今日に限っては本当に理解ができない。
にこにこ笑顔を崩さないイレンドを軽く睨み付けてから、ラウレルは隣に腰掛ける。
「さあ。何でだろうね」
「お前なあ」
「いいからさっさと行っておいで。巡回の途中で抜け出してもいいから」
「優等生の台詞じゃないな」
「今日は侵入者は来ないよ。そんな気がするんだ」
ただの勘だろうと悪態をつくラウレルを無視して、「それに」とイレンドが続ける。
「使ってあげなきゃ。いつまでもここにいたらカタールも可哀想だから。ね?」
そう言って微笑んだイレンドがラウレルの背中を軽く二度叩く。
ラウレルが三階へ行く目的を判っていながら、あえて使われないままの武器への感傷に置き換えたイレンドに感謝しつつ、ラウレルはゆっくりと頷いた。
「……そうだな」
元来性急な気性をしているラウレルは、一度腹を決めた以上、速やかにこれを三階へ持って行きたいと心がはやる。
強力なライバルの前であの人が自分だけに笑顔を見せてくれたりしたなら、天にも昇る気持ちで幸せな想いでいっぱいになれる。そんなことはないかもしれないが、その想像はラウレルを十分に幸せにした。
ただ、何故か──。
「ん?」
こちらに微笑みかけるイレンドを見たラウレルは、何故だか今すぐ三階へ行く気になれなかった。
隣に腰掛けているイレンドに少しだけ寄りかかり、自分と々くらい細い肩へ頭を乗せる。
「……ラウレル?」
「ちょっとだけしたら、行く」
「カヴァクを待たせてるよ?」
少し困ったようなその言葉とは裏腹に、イレンドから拒絶は伝わってこない。
何故──その答えがわからないまま、ラウレルは無言で瞳を閉じた。
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● このブログはクロストラブル/38.1の高山アキが執筆する、サイトやイベント関連のご連絡・萌語りなどの雑記と、小説の新作をupしておく保管庫場となっております。
● 小説は、サイト内に移動されたものから、一定期間をおいてこちらからは削除させていただきます。
● ジャンル・CPなどよろずとなっておりますので、各記事の説明書きをお読みの上、閲覧ください。
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